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原爆忌 被害者の肉声伝えていきたい

読売新聞 / 2024年8月7日 5時0分

 原爆投下から79年が経過し、被爆者の肉声を聞ける時間はそれほど残されてはいない。

 被害の実相を国際社会にどう伝え、後世に残していくかは、唯一の被爆国である日本にとって重い課題だ。

 広島市の平和記念公園で6日、109か国の大使らが参列して平和記念式典が開かれた。長崎市では9日に式典が開催される。

 広島、長崎両地の被爆者の平均年齢は、85歳を超えている。

 広島市は2012年、被爆体験を語れる人に「証言者」になってもらう事業を始めた。50人近くが証言者として活動してきたが、体調を崩したり、亡くなったりして、現在は32人にまで減っている。

 このため来年からは、平和記念資料館などに、被爆者が様々な体験を語った映像と音声が記録された端末を置く予定だ。

 訪問者が質問すると、多くの被爆者の音声などの中からAI(人工知能)が該当する内容を選び出し、端末に再生する仕組みだ。被爆者と対面できなくなる時代に備えた対策である。

 核を使うことがいかに残虐か、国内で語り継ぐだけでなく、多くの国に伝えていくことが大切だ。そのためには被爆者の声を様々な言語に翻訳し、外国人も端末を利用できるようにしていきたい。

 広島では昨年、先進7か国首脳会議(G7サミット)が開かれ、「核なき世界」を目標とした「広島ビジョン」が採択された。

 だがその後も、ウクライナの侵略戦争でロシアは核の使用をちらつかせ、中国は核兵器を増やし続けている。北朝鮮も核攻撃の能力を備えた、との見方が多い。

 核の増強だけが危険なわけではない。より深刻なのは、核を「使える兵器」と考えるような傾向が強まっていることだ。

 核廃絶という理想を掲げても、現実の脅威に対処できない以上、防衛力を強化せねばならない。「核の傘」を含む戦力で、米国が日本を守る「拡大抑止」の信頼性も高める必要がある。

 同時に、核の使用が自国にとってもどれほどの惨害を招くか、核保有国の指導者たちに認識させることが重要である。

 式典に出席した岸田首相は「核軍縮の機運を高めるべく、国際社会を主導していく」と述べたが、そのための取り組みは十分か。

 被爆者が活動できるうちに国連総会や様々な国際会議に出席してもらい、各国の要人に核の被害の恐ろしさを直接、訴えていくことは有効だろう。

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