慶大生メダリスト・尾崎野乃香、異色の「出稽古」で技磨く…「どん底からはい上がりチャンスをものにするのが私」
読売新聞 / 2024年8月7日 15時0分
第33回夏季五輪パリ大会は第12日の6日、レスリングの女子68キロ級の尾崎野乃香(21)(慶大)は、3位決定戦を制して銅メダルを獲得した。
誰も歩んだことのない道を切り開いてきた。レスリング女子68キロ級の尾崎野乃香選手(21)は「自分らしさを貫きたい」と、強豪ではない慶応大に進学。出稽古で力をつける異色のスタイルで銅メダルをつかんだ。
3位決定戦で、東京五輪銀メダリストのナイジェリア選手に勝つと、両手をたたいてガッツポーズ。雄たけびをあげ、観客席に笑顔で何度も手を振った。
地元の東京で、小学2年の時に競技を始めた。高校1年からは、五輪選手を育てるための日本オリンピック委員会のエリートアカデミーに入り、3年で全日本選手権を制した。
周囲を驚かせたのが進路選択。高校時代にオール5をとったこともあり、慶応大を志望した。部員が少なく、五輪に出場した女子選手もいない。関係者からは反対の声が上がった。
それでもモットーの「初志貫徹」の通り、意思を曲げなかった。「競技だけが人生じゃない。大学で色々な分野を学び、私らしい新しい道をひらきたい」
練習相手を求め、神奈川大や専修大、東洋大などに出稽古。大学では環境情報学部に通い、中東の選手との触れ合いをきっかけにイスラム文化を学んでいる。
国内大会で相次いで敗れ、五輪への道は一時、閉ざされかけた。「もう無理か」。光が差し込んだのは昨年9月の世界選手権だった。日本勢で唯一、68キロ級の代表が決まらなかった。
62キロ級からの変更を決断した。後押ししてくれたのが、五輪メダリストを輩出した山梨・韮崎工業高の文田敏郎監督(62)。毎週出稽古に通い、指導を受けた。
「頭で考えてやっているうちは、技はかからない。体に染みついてこそ試合でかかる」。5~6時間マットに上がることもあった。
パリ行きも崖っぷちからたぐり寄せた。勝った方が代表に決まるプレーオフで、残り10秒を切ってから劇的な逆転勝利。「自分の力だけじゃできなかった。信じられない」と涙ぐんだ。
今大会も準々決勝で敗退した後、敗者復活戦を勝ち上がった。「一度どん底を見た後、はい上がった。チャンスをものにするのが私。信じてくれた人の思いを裏切りたくなかった」と振り返り、4年後に向けてこう言い切った。「どんな形でも金メダルを取りたい」(上田惇史)
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