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片岡愛之助さんの「流白浪燦星(ルパン三世)」が世界同時配信「ファンの期待を裏切らない作品」

読売新聞 / 2024年8月9日 15時45分

 世界的な人気を誇る日本のアニメを原作に、昨年12月に東京で上演された新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン三世)」の動画が、8月11日に国内外28か国・地域に向けて同時配信される。主演の片岡愛之助さんが配信を前に読売新聞が発行する日刊英字紙ジャパン・ニューズのインタビューに応じ、「自分で言うのもなんですが、ルパンが好きな皆様の期待を裏切らない作品になっています」と作品への自信を力強く語った。(英字新聞部 石崎伸生)

舞台は安土桃山時代、衣装にも注目

 ルパン歌舞伎は、安土桃山時代を舞台に、ルパン一味がお宝を巡って盗賊と戦いを繰り広げるオリジナルストーリーだ。モンキー・パンチさんの漫画が原作のアニメの主要キャラクターが登場し、主役のルパンを片岡さんが演じた。自身も原作のファンだという片岡さんは、ルパン三世の歌舞伎作品化について、当初は「もちろんすごくうれしかったのですが、無理でしょう」という思いだったと振り返る。

 演出家らと話し合い、「もしルパンが歌舞伎の世界にいたら」という仮定からイメージを固めていき、まずは、ポスター作りに注力した。アニメの中でルパンがよく着ている赤色のジャケットを取り入れ、歌舞伎では赤い羽織のような衣装にした。ルパンを追いかける銭形警部には、アニメで着用しているトレンチコートやハットに似せた衣装をこしらえた。

 ルパンが愛してやまない峰不二子には、歌舞伎の世界らしく 花魁 (おいらん)をイメージしたきらびやかな衣装をまとわせた。「(作品の)ポスターを見た時に『面白そうだ』と思ってもらわなければならない」と片岡さんは考えたという。

「目玉になる呼び物」みんなで知恵絞る

 歌舞伎らしい作品に仕上げるために、舞台の演出にも知恵を絞った。限られた予算の中で、「目玉になる呼び物」を取り入れようと、歌舞伎作品で使われることもある滝を再現した見せ場を用意した。もともとは、演出家が違う場面を用意していたが、片岡さんの希望で滝を使った演出に差し替えたという。片岡さんは、「無理なお願いをしましたが、もういいか、と諦めてしまうと(作品が)つまらなくなってしまう。こだわり抜きました」と語る。

 ほかにも、演出家に任せきりにするのではなく、片岡さんはじめ、出演者と一緒に見所を作っていった。

 作品のクライマックスでは、歌舞伎の名作「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」で、主要な登場人物が川べりに勢ぞろいする有名なシーンに着想を得た場面構成にした。片岡さんは、新作の歌舞伎ではあるものの「初めて歌舞伎を見る方も、普段からご覧になっている方も、両方のお客さまに楽しんでいただける作品になった」と強調した。

 今作では音楽にも力を入れた。片岡さんたっての希望で、原作アニメのテーマ曲を劇中で使用している。演奏には三味線や琴などの和楽器が使われた。「皆さんがご存じのテーマ曲を、素晴らしい和楽器奏者の方々に演奏していただいたので、ぜひ音楽も楽しんでいただきたい」

歌舞伎に訪日客も注目、チケットは完売

 コロナ禍が明け、歌舞伎の各劇場にも訪日客が増えているといい、「私たちとしてはとてもありがたい」と片岡さんは言う。ただ、「日本人よりも海外の人たちの方が歌舞伎に興味を持っているのではないかな、と思えてしまうことが寂しい」とも語る。

 片岡さんは歌舞伎役者としてだけでなく、テレビドラマや映画作品にも活躍の場を広げ、人気ドラマ「半沢直樹」での好演も話題となった。片岡さんは、「僕が歌舞伎だけでなく映像作品にも出演するのは、(視聴者に)歌舞伎への取っかかりを提供したいから」と力を込める。今回のルパン歌舞伎も、これまで歌舞伎を見たことがなかった人たちの注目を引くための試みの一つだった。

 こうした新作歌舞伎について、「『本当の歌舞伎ではない』とおっしゃる方もいるが、古典だけが歌舞伎ではない」と片岡さん。江戸時代に活躍した近松門左衛門を例に挙げ、「(「曽根崎心中」のような)近松の作品も、実際に起きた心中事件を書いて作品にしており、いわば新作だった」と指摘する。

 「今回の作品も時がたてば古典になるし、人気があれば繰り返し上演されることになる。後世の人が『やりたいな』と思ってくれる作品ができればなと思いながら毎回、新作に取り組んでいます」と話す。

 昨年12月に上演された今作は、チケットが完売し、当時から「海外に配信してほしい」という要望の声が多数、寄せられていたという。片岡さんは「ルパン三世も含め、やはり日本のアニメの力はすごいなと感じた。海外の方にも文化としてとても好まれている」と手応えをつかんだ。

 新型コロナの感染拡大以降、歌舞伎の海外公演は途絶えている。片岡さんは「海外で公演できる機会があれば、ぜひやりたい」と意気込む。海外では、古典作品が好まれるというが、「今作は海外のアニメファンにも知られているルパンが登場するし、歌舞伎らしい演出も見られる。海外公演向きなのではないかと思っている」と語った。

かたおか・あいのすけ 1972年3月生まれ。大阪府堺市出身。81年に歌舞伎の初舞台を踏み、92年に歌舞伎役者・片岡秀太郎の養子となり、六代目・片岡愛之助を襲名した。

新作歌舞伎、初の同時配信

 ルパン三世歌舞伎は、松竹株式会社の有料動画配信サービス「歌舞伎オンデマンド」で8月11日午後9時(日本時間)から、日本や米国やフランス、ブラジルなど計28か国・地域で同時配信される。英語字幕付き。12~18日の期間中は繰り返し視聴も可能。

 松竹が、新作歌舞伎を世界に向けて同時配信するのは初めてで、利用者が視聴しながら画面上でチャットできる機能も初めて取り入れる。担当者は、「世界中の視聴者の方にライブ感を楽しんでいただきたい」と話した。

 視聴にかかる料金は、国内視聴者は4400円にシステム利用料の220円、国外での視聴は4000円に200円の利用料。

※「インタビューの英文記事はこちら(https://japannews.yomiuri.co.jp/original/perspectives/20240803-202481/)

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