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スケボー女子パークが伝えたもの、「憧れてばかり」だったアイドルの3年間…清司麗菜の#skatelife

読売新聞 / 2024年8月7日 17時0分

公演でパフォーマンスする清司さん

 パリオリンピックのスケートボード女子パークで (ひらき) 心那 (ここな)選手が銀メダルを取った日、NGT48の清司麗菜さんは地元のスケートパークにいました。世界最高の舞台と人もまばらなパーク。彼女がスケボーにハマるきっかけとなった東京五輪から3年――。アイドルは確かに歩みを進めていました。「清司麗菜の#SkateLife~continuity180~」の第20回です。

ガールズスケーターになった日

 思えば、憧れてばかりの人生だった。

 NGT48に入って、同期にはたくさんのスターがいた。荻野由佳ちゃんがAKB48選抜総選挙で5位になったときも、本間日陽ちゃんが表舞台に立っていく姿も、ただただ「すごいな」と見つめているだけだった。悔しさとか、焦りとか、そういう感情すら起きてこない。彼女たちが活躍して、NGT48の仕事が増えて、それについていく。それでいい――。そんな時間がずいぶん長く続いていた気がする。

 東京五輪のスケートボード女子パークで、私はスケートボードと出合った。その時は技のすごさとかじゃなくて、ただ皆で喜びあって、たたえあって、互いにリスペクトをするその空気に憧れた。「やってみたい!」と瞬間的に思って、その日から、私のガールズスケーターとしての人生が始まった。

 あれから、3年の月日がたった。

スケーターカルチャーとは…

 パリ五輪のスケートボード女子パークで、開心那選手が銀メダルを獲得した。本当に、失敗したことがないんじゃないかと思うくらいの安定感と安心感。決勝で最後のランを滑るときも1位を狙って最後まで攻め切って、しかもフルメイク。それまで3位だったところから、順位を1つ上げての銀メダルに、彼女の精神的な強さを感じた。それに、なにより滑りがおしゃれだ。

 お友達の草木ひなの選手は8位。決勝の最後のランで失敗したときには、一人の部屋で声をあげてしまった。置きにいけば、上位が狙えたのかもしれないけれど、最後の最後までトップを目指して攻め切った姿は格好良かった。

 予選落ちの四十住さくら選手は、自身が出場した予選1組目の試合が終わった直後に「連覇しようと思ってきたけど……」「ほかの人の失敗は祈りたくない」と語ったのが印象的だった。これがガールズスケーターを引っ張ってきた人の言葉だと思えたし、スケーターカルチャーそのものだと思う。

「8合目まで来た」

 パリで女子パークが行われる、数時間前。私はホームにしているスケートボードパーク「AIRMANスケートパーク」にいた。実は、最近、うまくトリックが決まらなくてモチベーションが下がっていた。平日の昼、暑いこともあって人はまばら。でも、知った顔が何人かいて、その人たちが私に「キックフリップ」を教えてくれた。板を空中で表裏に一回転させるトリックで、私が今、目標にしているトリックの一つだ。

 当然、1日で決まるようになるわけもなく、メイク(=成功)は持ち越し。でも、「8合目までは来たな」なんてお世辞も言ってくれたりして、ちょっぴり気分はよかった。寄り添うように練習しあえる仲間の存在のおかげで、また上手くなりたいって思えた。この空気感が私は好きだ。

 パリでもそんな場面がたくさんあった。女子パークで金メダルを獲得したのは、オーストラリアのアリサ・トルー選手。その場には、女子ストリートで優勝候補でありながらメダルを逃した同郷のクロエ・コベル選手が一緒に喜ぶ姿があった。最後のランで開選手が得点を待つときに、近くにいたのは一つ上の順位にいたイギリスのスカイ・ブラウン選手。彼女は開選手が銀メダルになると――つまり、自分が銅メダルに順位を落とすと――、笑顔を見せて一緒に抱き合った。

 国を背負って、プライドを持って頂点を目指す戦いなのに、ともに一緒に喜び、涙を流す。人もまばらな新潟市のスケートパークで私が一人でつたないトリックを練習しているその時も、パリで開かれている世界最高峰の戦いでも、同じスケーターカルチャーが流れている。

スケボーが連れて行ってくれる

 あの日から、3年がたった。その間、NGT48ではエースが卒業していった。

かつて憧れた人たちがグループを去っていく3年間で、私は憧れるだけの人生はもうやめた。スケートボードにいろんなスタイルがあるように、アイドルにもいろんなスタイルがあって良いと思えるようになった。

 スケートボードに打ち込むにつれて、スケボー関連の仕事も増えた。趣味のはずのものに、仕事のプレッシャーが重なったこともあって怖くなったこともあったけれど、私は私の向き合い方でスケートボードを続けていればいいんだって今では思えるようになった。

 境遇の近いメンバーがイベントに選ばれた時、色んな場面で活躍してる時、私は対抗心を燃やすだけだったけれど、スケーターがそうであるように、今となってはそれぞれの活躍やスタイルの違いを認められるようになった。

 スケートボードが、私を成長させてくれた。強くしてくれた。ほかの人との違いを認め、自分らしくいることの大切さを教えてくれた。

 キックフリップができなくて、NGT48の「清司麗菜」としてそれほどバズるわけでもなく、日々節約生活を送る私。それでも、スケーターである限り、パリで世界最高のスケーターたちが見せてくれた、あの素晴らしい景色の延長線上に立っているのは確かだ。だから、背筋を伸ばして、まっすぐ前を向いて歩いて行かなくちゃ。スケボーは、どこまでも連れて行ってくれるはずだから。

プロフィル

清司麗菜(せいじ・れいな)

 NGT48の1期生。埼玉県出身。「バイトAKB」としてアイドルキャリアをスタートさせ、2016年にNGT48に加入。全国スケートボード施設連絡協議会アンバサダー。趣味はスケボーのほか、歌うこと、筋トレ。Instagramは「 @reinaseiji 」、X(旧Twitter)は「 @official_seiji 」。

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