五輪SNS中傷 選手を追い詰める言葉の暴力
読売新聞 / 2024年8月8日 5時0分
重圧の中で懸命に戦う選手たちが、SNS上の心ない言葉に傷つけられている。感情に任せて、
熱戦が続くパリ五輪で選手への中傷が後を絶たない。
陸上女子競歩の柳井綾音選手は、リレー種目に専念するため、個人種目への出場を辞退した。これに対し、自身のSNSには「身勝手だ」などと批判する投稿が相次いで寄せられた。
柳井選手は「厳しい言葉に傷つきました」と投稿し、「試合前は神経質になり、繊細な心になります。このようなことが少しでも減ってほしい」と訴えた。
このほか、柔道やバレーボールなどでも、敗れた選手や対戦相手の戦い方や態度を、汚い言葉で
日本選手団を統括する日本オリンピック委員会(JOC)は「投稿に際してはマナーを守ってほしい」とする声明を発表した。特に悪質な投稿については、法的措置も検討するという。
SNS上の中傷は、日本だけの問題ではない。体操の男子団体総合で日本と金メダルを争った中国チームの選手は、最終種目の鉄棒で2度落下し、「チームから出ていけ」と罵倒された。
応援に熱がこもるのは、どの国も一緒だろうが、競技にはミスも敗戦もつきものだ。負けたことで、それまでの
SNSを活用し、ファンを増やしている選手もいる。ただ、広く情報を発信すれば、それだけ批判が寄せられるリスクも高まる。
選手への中傷は、3年前の東京五輪でも起きた。メダル獲得直後に「消えろ」といったメッセージを受け取った選手もいた。
国際オリンピック委員会(IOC)は今大会から、人工知能(AI)でSNSを監視し、事業者に問題投稿の削除を求めるシステムを導入した。精度を高め、実効性のある対策にしてもらいたい。
SNSは匿名性が高く、言葉が過激化しやすい。内容によっては刑事、民事上の責任を問われる可能性もあると知るべきだ。
投稿する前に、内容が適切かどうかよく考えてほしい。相手の面前で言えないことは、書き込むべきではない。何が中傷にあたるのか、理解できていない人もいる。SNS事業者は、投稿者にマナーの向上を呼びかけてほしい。
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