偏食の上司にハリセン「塩分多すぎやろ」…兵庫県尼崎市が「バズる動画」で市民啓発

係長との掛け合いを見せる管理栄養士

　兵庫県尼崎市の公式インスタグラム（インスタ）の投稿が話題になっている。管理栄養士が偏食の上司を指導したり、消防隊員が鍛え抜かれた肉体を披露したり。「お役所」の堅いイメージとかけ離れた動画を配信して注目を集めることで、重要な情報が伝わるようにしている。（妻鹿国和）

　市保健所は５月から、女性の管理栄養士の「ナージャ」と「みっしぇる」が、小柄でやせ形、独身の男性係長の昼食をチェックして、栄養指導する動画配信を始めた。

　おにぎりの具に大量の塩昆布を入れてきた係長。「塩分多すぎやろ、何考えてんねん！」とハリセンでたたかれる。「栄養価が高い」と指導された係長。大きな焼き 海苔 （のり）を持つ姿に「海苔がでかいのか、係長が小さいのか……」と突っ込まれる。漫才のような掛け合いが魅力だ。

　市が２０２２年度に実施した市民アンケートでは、若年層（１８～３９歳）が、主食、主菜、副菜がそろった食事を１日２回以上食べると答えた割合が低かった。そこで若年層の栄養知識を高めようとインスタを活用。２人の指導による栄養バランスの取れた食事で係長の体がどう変化していくのか。１年間かけて観察する。

　市消防局は同年１１月にインスタを開設。「消防・防災を楽しく学ぶ」をテーマに週１回程度投稿している。救急隊員が、熱中症患者の応急処置や倒れた人の搬送方法など、いざというときに使えるテクニックを伝授。消防隊員による防火服を早く着替える競争などユニークな動画を配信する。

　特に意識しているのは、女性の情報拡散力だ。

　水難救助訓練に臨む動画では、隊員が引き締まった肉体を披露している。なかでも人気が高いのは「救急講座」を配信している救急課の「岸本さん」。コメント欄には「イケメンすぎて内容が入ってこない」などのメッセージも。

　フォロワー５万７０００のうち８割が女性。自治体消防のインスタでは全国屈指のフォロワー数だという。市消防局企画管理課の隅埜利次係長は「啓発につながる動画をバズらせるために、女性を意識することは重要。情報が拡散すれば防災知識の周知につながり、命を守る行動に役立つ」とする。