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多くの認知症患者診察の医師、自身も発症し「本人大使」に…「嫌なこと忘れるのも一つの特技」

読売新聞 / 2024年8月8日 15時17分

「ぐんま希望大使」の内田さん(左)と長女・田中さん。認知症への理解・啓発活動に取り組む(群馬県沼田市で)

 群馬県沼田市で多くの認知症患者を診察してきた医師の内田 好司 よしじさん(87)が、自身も認知症となり、県から認知症本人大使を委嘱された。物忘れの症状を前向きに捉え、「認知症の医師」ならではのメッセージを発信している。(前橋支局 阿部文彦)

 内田さんは1988年、出身地の沼田市に病院と介護老人保健施設を設立。92年には群馬県で初めて「認知症専門棟」の許可を得て、院長として活躍した。認知症専門医の長女・田中 志子 ゆきこさん(58)に病院経営を譲った後も診療を続けていたが、2022年、中等度のアルツハイマー型認知症と診断された。現在は東京都内の老人ホームで妻と暮らす。

 家電や電子機器の操作、決められた時間に薬を飲むこと、鍵の取り扱いが難しくなったが、日常会話に支障はない。「年をとって認知症になることは当たり前だと思っています」と話し、「嫌なことを忘れるのも一つの特技」と捉える。散歩が楽しみで、迷ったときは周囲の人に道を聞くと丁寧に教えてくれるという。

 昨年12月に群馬県から認知症本人大使「ぐんま希望大使」を委嘱された。「医師が訴える力は強いはず」と田中さんが推薦し、内田さんも「医師ならではのメッセージがあれば、認知症の人を支える地域づくりが進む」と引き受けた。認知症になっても希望をもって暮らすことを実践する。

 今年3月、地元ラジオ局の特別番組に田中さんと親子で臨んだ。6月には、認知症患者と家族への支援などについて医療福祉関係者らが学ぶオンライン研修会に患者として参加。自身の状況を「あまりネガティブに思うことはない」と語り、記憶力の衰えを気にする人への助言や、支援を受ける側の考えを説明した。

 厚生労働省の研究班によると、国内で認知症の高齢者数は22年時点で推計443万人にのぼり、65歳以上の人口がほぼピークを迎える40年には「高齢者の7人に1人」に相当する584万人となる見通しだ。認知症の人が自立して生活できる体制の整備が急務で、今年1月施行の認知症基本法では、自治体が本人や家族の意見を聞くことを努力義務に定めた。内田さんは「認知症に理解のある社会づくりに少しでも貢献したい。病んでいる人、弱っている人には優しい気持ちで接してほしい」と願っている。

 ◆認知症本人大使=講演や会議への参加を通じて認知症への理解・啓発を進めるのが役割で、2019年度に創設された。厚生労働省の「希望大使」と都道府県の「地域版希望大使」があり、これまでに計約75人が委嘱された。

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