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日下尚「人生を変えるという思いで、前に出た」…相撲スタイルで押しまくり頂点

読売新聞 / 2024年8月8日 20時18分

レスリング男子グレコローマン77キロ級で優勝し喜ぶ日下尚選手(7日、パリで)=関口寛人撮影

 パリ五輪のレスリングは、7日に行われた男子グレコローマン77キロ級決勝で、初出場の日下尚(三恵海運)が、デメウ・ジャドラエフ(カザフスタン)を5―2で破り、金メダルに輝いた。

 どんな相手でも押しまくって前に出る。レスリング男子グレコローマン77キロ級で金メダリストになった日下尚選手(23)の戦い方は、独自の「相撲スタイル」。国技との二刀流で磨いた武器で相手をねじ伏せ、表彰台へと駆け上がった。(上田惇史)

 決勝でもカザフスタン選手にリードされながら、ひるまずに押した。試合をひっくり返し、「前に出ることしかできない。人生を変えるという思いで、前に出ました」と胸を張った。

 3歳の頃、地元の高松市でレスリングを始めた。全く芽が出ない。練習で年下に投げ飛ばされ、試合でも勝てない。眉が下がってハの字を描き、自信なさそうな表情を浮かべていた。

 「自分は凡人だ」

 そう思っていた。ただ、周囲の誰もが認める才能があった。指摘を素直に聞き入れ、ひたむきに取り組む姿勢だった。

 小学生になると、週末は相撲道場に通い始めた。指導者の黒田良治さん(69)に言われた。「相撲では、体格差は言い訳にならない。どんなに大きな相手でもぶつかっていこう」

 中学時代は、まわしを締めていた時間の方が長かったかもしれない。四股を踏み、20番連続でのぶつかり稽古を繰り返した。練習の締めくくりに、「ちゃんこうどん」をかき込んだ。

 メキメキと力を伸ばし、全国大会に出場。レスリングでも、全国の舞台に上がれるようになった。卒業時に相撲の強豪校から勧誘されたが、きっぱり断った。「レスリングで五輪に行くのが夢なんです」

 相撲で培ったのは、前に出る強さ。レスリングでも相手を場外に押し出せば1点を得られる。独自のスタイルを築き上げ、高校3年で日本一になり、全日本選手権でも3位に入った。

 日本体育大を経て、社会人になってからも、相撲の基礎を大切にしている。試合前には50~100回、四股を踏む。代表に決まると言った。「相撲をしていなかったら、ここまで来られなかった」

 今年に入り、原点に立ち返ろうと、佐渡ヶ嶽部屋を訪ねた。大関の琴桜関から技術指導を受け、「足腰から力を出すんだ」との言葉を授けられた。

 勝負飯は大好きな古里・香川の名物、うどん。パリにも持ち込んだ。「うどんのようなコシの強さと相撲を生かしたレスリングを見てほしい」との言葉通り、最後まで粘り強く戦った。

 「『日下尚を見せつけてやろう』と思ってマットに上がった。最高の気分で、夢を見ているよう」。優勝すると、客席に飛び込み、母親らと抱き合った。掲げられた横断幕には、こう書かれていた。

 「超人 日下尚」

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