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大阪高裁の刑事裁判決定、検事が50分間責め立て「人格攻撃というほかない」…プレサンス事件

読売新聞 / 2024年8月8日 23時19分

大阪高等裁判所

 大阪地検特捜部が手がけた業務上横領事件で違法な取り調べをしたとして、大阪高裁は8日、担当だった田渕大輔検事(52)を特別公務員暴行陵虐罪に問う刑事裁判を開く決定をした。不動産開発会社「プレサンスコーポレーション」元社長(無罪確定)が刑事裁判にかけるよう付審判請求していた。村越一浩裁判長は「威圧的、侮辱的な言動を続け、不法だ」と指摘した。

 検察官が付審判決定を受け、裁判で被告になるのは初めて。今後、裁判所が検察官役の弁護士を指定し、大阪地裁で公判が開かれる。

 田渕検事は2019年12月8日、山岸忍・元社長(61)の部下だった元部長の取り調べで机をたたいて「検察なめんなよ」と述べ、翌9日にも「あなたはプレサンスの評判をおとしめた大罪人」などと発言。元部長は山岸氏の関与を認めた。特捜部は山岸氏を逮捕したが、21年10月の地裁判決は元部長供述の信用性を否定し、山岸氏を無罪とした。

 山岸氏は田渕検事を刑事告発し、地検に不起訴(嫌疑不十分)とされて地裁に付審判を請求した。地裁は昨年3月、取り調べは陵虐行為にあたるとした上で「継続的ではなかった」として請求を棄却。山岸氏が高裁に抗告していた。

 村越裁判長は決定で、田渕検事が8日の取り調べで元部長を約50分間にわたり責め立てたとし、「人格攻撃で、検察官に迎合する虚偽供述を誘発しかねない」と指摘。9日の発言も「恐怖心をあおる脅迫的な内容」とし、2日間の取り調べは陵虐行為にあたり審判に付すべきだと結論づけた。その上で「取り調べが録音・録画されていたにもかかわらず、検察が問題視して適切に対応した形跡がみられないことが問題の根深さを物語っている」と述べた。

 地検の田中知子次席検事は「個別事件の裁判所の判断にコメントは控える。今後とも適正な取り調べの実施に努めたい」とした。

 大阪高裁決定は、不適切な取り調べを検事個人の問題に 矮小 わいしょう化せず、検察組織の体質が背景にあると踏み込んだ。警鐘を鳴らし、猛省を促す異例の内容だ。

 検察の独自捜査事件では、逮捕された容疑者の取り調べで録音・録画が義務づけられる。今回の言動も記録されたが、検察内で問題視はされなかった。容疑者を追及する過程で厳しく迫ることはやむを得ないとの声は今も根強い。

 これに対し、今回の決定は威圧的、侮辱的な言動で、「不法だ」と断じた。容疑者の逮捕から起訴まで一貫して担う特捜部では、批判的にチェックする役割が軽視される危うさも指摘した。

 検事の取り調べを巡っては、他でも問題が相次いで発覚している。<密室における追及的な取り調べに過度に依存した捜査は、もはや時代の流れと 乖離 かいりしたもの>。これは2010年に発覚した大阪地検特捜部による証拠品改ざん事件の後に取りまとめられた検察改革の提言だ。あのときの反省が生かされているのか。検察は、高裁の警鐘を看過してはならない。(林信登)

 ◆付審判請求=不起訴となった公務員の職権乱用事件の審理を求める刑事訴訟法上の手続き。裁判所が認めれば通常の刑事裁判と同様に審理される。公務員側は付審判決定に対する不服申し立てはできない。最高裁によると、2022年までに出された付審判決定は22件で、9件で有罪が確定し、13件は無罪や裁判を打ち切る「免訴」となった。

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