難民選手団初のメダルは銅、英当局に拘束されたこともあるヌガンバ…観客からは温かい「シンディ」コール
読売新聞 / 2024年8月9日 11時10分
パリ五輪のボクシングは、女子75キロ級準決勝が8日に行われ、カメルーン出身のシンディ・ヌガンバ(難民選手団)がパナマ選手に1―4の判定で敗れた。3位決定戦がないため、難民選手団が2016年のリオデジャネイロ五輪で誕生して以来、初となるメダルの色は銅に決まった。
試合では、1メートル79の長身から繰り出されるパナマ選手のパンチに苦しんだ。第2ラウンドは積極的に前に出て優勢に試合を進めて奪取。最終ラウンドもひるまず拳を繰り出したが、攻めきれなかった。
準々決勝の勝利でメダルを確定させ、「メダルを(銅から銀以上に)変えたい」と語っていたヌガンバ。判定で相手の名前がコールされると、瞳を潤ませて唇を固く引き結んだ。取材エリアでは記者団の呼びかけに答えなかった。
11歳で「良い人生のために」渡英したが、言葉や文化の違いに苦しみ、いじめにも遭った。英当局に「不法滞在」として一時的に拘束されたこともある。カメルーンで刑罰の対象となる同性愛者であることをカミングアウトしたことで、難民に認定された。
今大会では「全ての難民の代表」との自負があった。難民選手団初のメダリストになることにも「この上なく大きな意味がある」と喜びを示していただけに、ショックは大きかった。
一方で、試合を見守った観客からは温かいエールが送られた。ヌガンバが反撃に転じた第2ラウンド以降には「シンディ」コールが巻き起こった。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は準々決勝後、ホームページで「メダルの色が何であろうと、彼女の歴史的な功績は約1億2000万人の難民に力強い希望のメッセージを送っている」と祝福した。(松久高広)
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