夏のマラソンとしては悪くないペース、日本勢は先頭集団にいて心配ない[武井隆次の目]
読売新聞 / 2024年8月10日 15時40分
パリオリンピックは10日、陸上の男子マラソンがスタート。日本勢は小山直城(ホンダ)、赤崎暁(九電工)、大迫傑(ナイキ)の3人が出場している。パリ市庁舎をスタートして、中心部の観光名所を巡った後、郊外のベルサイユ宮殿を経て市街に戻るルートで行われ、中盤と終盤に急坂が待つ設定は五輪史上最もタフなコースと言われる。注目のレースを、早稲田大時代に箱根駅伝で活躍し、2002年アジア大会男子マラソン銅メダリストの武井隆次さんが解説する。
日本代表の3人が出場権を競った昨年のマラソン・グランド・チャンピオンシップ(MGC)は、雨が降る寒い日だった。パリのコースとは条件の中身が違うが、「悪条件」を克服して五輪切符をつかんだ3人に期待したい。
スタート時の気温は19度、湿度は66%。湿度が適度にあった方が呼吸しやすい。夏のマラソンとしては好条件になった。
81人のランナー数にしては、最初の市街地のコース幅が狭い。みんな混雑を嫌って縦長になった。日本と違って放射状の街路なので、ヘアピンカーブもある。横断歩道のでこぼこもあり、平坦だが走りづらそうだ。
カーブで通過時に外に振られてしまう選手も見られた。そのたびにスピードを上げてついていかなければならず、繰り返しとなると、じわじわと効いてくる。
それと、石畳の道だ。私もパリマラソンを走った経験があり、必要以上に気にすることはないが、でこぼこも多少あり、滑ることもあるから気を付けないと足を取られる。きょうは雨が振っていないのは幸いだ。
序盤は様子見で、夏のマラソンとしては悪くない1キロ3分8秒ぐらいのペースで入った。全体の難コースを考えたら、遅れたくない心理が働いているのか。ただ、4キロから5キロにかけて給水のためにペースが上がり、集団が少しバラけてきた。5キロ通過時点で日本勢3人は先頭から2~8秒差があるが、集団からこぼれているわけではないので心配はない。むしろ、あまり前にいない方がいい。
たけい・りゅうじ 1971年生まれ。東京・国学院久我山高で高校初の5000メートル13分台をマーク。早大時代は箱根駅伝で4年連続区間賞(1区、1区、4区、7区)、うち3度が区間新記録で、同期の花田勝彦、櫛部静二と並び「三羽がらす」と呼ばれた。卒業後はエスビー食品で2002年びわ湖毎日マラソンを2時間8分35秒で優勝。02年アジア大会男子マラソン銅メダル。引退後はエスビー食品のコーチ、監督を歴任。現在は「したまちアスリートクラブ」の監督として小、中学生を中心とした後進ランナーの指導にあたっている。
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