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「プリンター事業の次の柱として産業領域に軸足」「新事業で組めるところは積極的に連携したい」…ブラザー工業・池田和史社長

読売新聞 / 2024年8月19日 11時8分

 家庭用ミシンやプリンターで知られるブラザー工業は、産業用プリンターや工作機械など、法人向け事業を成長領域に据える。中期的には、M&A(企業の合併・買収)を含む他社との協業も視野に入れる。池田和史社長に戦略を聞いた。(聞き手・杉本要)

ブランドの個性がしっかりしていない

 ――経営の課題は。

 「かなり、プリンター事業に依存していて、市場が徐々に小さくなっている。次の柱をどうやって作るか。産業領域に軸足を移したいと思っている。ブランドの個性がはっきりしていない。ブラザーは日本で言えばミシン、海外ではタイプライターのイメージが強く、ブランドの個性がしっかりしていない。お客様の役に立ち、喜んでもらいたいという思い『At your side』をよりどころにしようと思っている。

 私は長い間、営業をやってきた。お客様にブラザーの価値を認めて頂き、対価を支払ってもらった。お客様が喜んでくれることに価値を感じる会社を目指したい」

 ――産業領域に力を入れる理由は。

 「やはり収益性が高い。産業領域ならば、なんでもいいのではなく、工作機械ならば、電気自動車(EV)の流れは続くので、生産財の供給は拡大基調にある。産業用印刷も、企業にとっては、トレーサビリティー(履歴管理)が求められる一方で、紙の包装は環境の観点で減っていく。本体やボトルに印刷することが必要になり、ビジネスチャンスがある」

業務提携や資本提携など、様々な方法

 ――看板などの製作に使われる産業用が強い同業のローランド・ディー・ジーへの株式公開買い付け(TOB)は実現しなかった。

 「共同で新しい商品を開発するなど、現場感覚ではうまくいっていると聞いていた。

 提案をしたところで、先方が経営陣による自社株買収(MBO)の実施を決めた。TOBの提案に同意を頂けなかったが、この手段しかなく、理解を得たいと考えていた。ローランドが持つ技術力、販売力、ブランドは強い。わが社が持つ技術と組み合わせることで良い関係ができると思った。

 M&Aは、会社を買うことが目的ではなく、一緒に事業をやって成長するためのものだ。産業領域や新事業で組めるところは積極的に連携したい。M&Aだけでなく、業務提携や資本提携など、様々な方法がある。幅広く協業を考えていきたい」

 ――プリンター事業の戦略は。

 「商品を売ったらお客様との関係が終わってしまうことが多い。テクノロジーをてこに、お客様とつながっている状態を多く作っていきたい。すでに他社の商品を使っているお客様との接点も少ない。

 ブラザーのプリンターはレーザーもインクジェットもあり、幅広いニーズに対応できる。用紙はA4判向けしかやらないので、大型機のメーカーとの関係も維持できる。

 在宅勤務が増え、オフィスのペーパーレスは確実に進んでいる。その分、家で印刷する機会は増える。A4だけだから、機器が小さくなる。複数の紙を使わないから、買い替えまでの寿命も延びる。機器の売り上げは減っても、消耗品は期待できる」

 ――売り上げの8割以上が海外部門で占める。円安基調は追い風になるか。

 「為替や地政学的なリスクを含めて、経営環境の見通しがつきにくい。リスクを分析しながら、経営する仕組みを作っていきたい。輸出の比率が大きい企業なので、円安はプラスになる。

 かつての円高の経験もあり、ドル建てで調達している部品もある。円安がマイナスに効くところもあり、実は経営へのインパクトは小さい。為替予約も使って、リスクをヘッジしている。

 物流がひっ迫しているほか、中国の景気が戻ってこないのもリスクの一つだ」

◆池田和史氏(いけだ・かずふみ) 1985年神戸大経済卒、ブラザー工業入社。副社長を経て2024年6月、社長。社長就任前は、経営企画担当として、中期経営計画の策定のほか、人事制度の改革に関わった。海外経験も多く、ドイツの販売会社のほか、米国法人では社長も務めた。香川県出身。

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