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長崎原爆の日 中東情勢に翻弄された式典

読売新聞 / 2024年8月10日 5時0分

 多くの原爆犠牲者を悼み、痛ましい被害の実態を世界に伝える貴重な機会が、国際的な対立に ほん ろうされてしまったことは残念でならない。

 長崎は9日、被爆から79回目の「原爆の日」を迎えた。長崎市では平和祈念式典が開かれ、過去最多となる100の国・地域と欧州連合(EU)が出席した。

 岸田首相は「核軍縮を巡る情勢が厳しさを増している今だからこそ、『長崎を最後の被爆地に』と世界へ訴え続ける」と述べた。

 毎年8月に広島と長崎で開かれる式典を通じて原爆の悲惨さを発信し、核保有国にその使用を思いとどまらせることは、唯一の被爆国である日本の責務だ。その意味で今回、多くの国の代表が式典に出席したことは意義深い。

 一方で、長崎市は今回、パレスチナ自治区ガザで攻撃を続けるイスラエルを招待しなかった。鈴木史朗市長は「政治的理由ではなく、不測の事態が発生するリスクを考えた」と説明している。

 表向き、イスラエルに反発する勢力に式典を妨害されたくなかった、ということのようだが、実際は、イスラエルがガザで人道の危機を広げていることを考慮した、との見方は多い。

 イスラエルは6日の広島市での平和記念式典には招待され、駐日大使が出席した。他方、ロシアとその同盟国のベラルーシは、広島、長崎両市とも招待しなかった。

 イスラエルを招待しなかった長崎市に対し、先進7か国(G7)のうち日本を除いた6か国とEUは、大使が欠席した。6か国などは先月、市に書簡で「イスラエルをロシアと同列に置くことは誤解を招く」と伝えていたという。

 一方的にウクライナを侵略しているロシアと、イスラム主義組織ハマスのテロに対して自衛権を行使しているイスラエルを「同列」に扱うべきではない、という6か国などの主張は理解できる。

 だが、ガザの死者は子供を含めて4万人近くに達している。多くの国が指摘しているように、イスラエルの攻撃が自衛権行使の範囲を逸脱しているのは明白だ。

 原爆で壊滅的な被害を受けた長崎の人々が、イスラエルの非人道的な行為に嫌悪感を抱き、平和の式典に招きたくない、という感情を抱いたとしても無理はない。

 ただ、この件をきっかけに「日本は反イスラエルだ」「反ユダヤ主義の国だ」といった誤った印象が国際社会に広がるような事態は避けねばならない。政府は国際世論に目配りする必要がある。

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