キャプテン翼の「必殺技」ができるまで…高橋陽一さん「サッカー以外のスポーツからヒント」

　人気サッカー漫画『キャプテン翼』の作者で、関東サッカーリーグ１部所属の「南葛ＳＣ」（東京都葛飾区）代表の高橋陽一さんと風間八宏・南葛ＳＣ監督が、読売新聞ポッドキャスト「ピッチサイド　日本サッカーここだけの話」に出演した。キャプテン翼の必殺シュート誕生の舞台裏や風間さんが育ったサッカー王国・静岡のサッカー文化について、番組ＭＣの元日本代表・槙野智章さんが聞いた。

みんな大好き必殺シュート

　キャプテン翼の世界で忘れてはならないのが、「ドライブシュート」「タイガーショット」「イーグルショット」などの多彩な必殺シュート。高橋さんは「こんなことができたら面白いだろうなというのが基本にはありますが、サッカー以外のスポーツからヒントを得てつくることはしていますね」と語る。

　現実に再現可能な必殺シュートがありつつも、少年漫画らしい表現で子どもたちのイマジネーションを突き動かす必殺シュートも。立花政夫と立花和夫の双子の兄弟が繰り出す「スカイラブハリケーン」は、「プロレスのタッグチームの技を参考にして」と明かす。空手キーパーの異名を持つゴールキーパー若島津健の「三角跳び」は、もちろん空手から着想を得たという。

　スカイラブハリケーンの再現を試みたサッカー経験者は多いだろう。立花兄弟に次藤洋が加わった強化版シュートも「組み合わせたら面白いかな、面白くなるかなっていう発想で考えてますね」。

　ただ、スカイラブハリケーンも、スカイラブハリケーンを防ごうとゴールポストによじ登る行為もいずれもファウルを取られる可能性が高そうだ。

ドイツでドライブシュートの練習

　「何回もまねしてやりましたよ。『カミソリタックルだ』ってやりましたよ」。槙野さんは少年時代を振り返る。

　カミソリタックルは、早田誠が相手の死角から繰り出すファール覚悟のスライディングタックルだ。

　大空翼の代名詞でもある「ドライブシュート」は、風間さんがドイツリーグに所属していたときに指導された経験がある。ボレーシュートで「（ボールを蹴るポイントが）速いから『もっとためろ』って。体を大きく使ってドーンってやるとすごい落ちてくる。でもあんなに（大空翼みたいに）成功しないからね」

　現実のサッカーでも、元ブラジル代表のロベルト・カルロスの強力なフリーキックは必殺シュートだろうし、近年はボールの進化も手伝い「無回転」「ブレ球」など、リアルの世界にも「必殺シュート」は存在する。

静岡はスパイクで通学？

　静岡県清水市（現・静岡市）出身の風間さんによると、まことしやかに語られる「サッカー王国・静岡」の都市伝説があるという。静岡ではサッカースパイクを履いて体育の授業を受けていた？

　風間さんは「俺も聞いた話だけど」と前置きしつつも、「藤枝とか」とうわさの存在を認める。ただ、風間さんが育った清水市ではしなかったという。一方、事実として「当時は（アシックスの）『ボンバー５５』ってスパイクをみんな履いてた。安いんだよ。みんな履いて（サッカーを）やってたから」とも振り返る。

　じゃあ、スパイクを履いたまま通学していたのか？

　「それで通学してたって言ってましたよ、藤枝は。清水ではなかったですよ」。うわさの真相は分からないが、こういった都市伝説が生まれるところがサッカー王国たるゆえんだろう。風間さんも学校の昼休みには「クラスに４０人いたら、サッカー部３人対あと３７人みたいなサッカー。敵も味方も分かんない」と、サッカーが生活に根付いた環境を懐かしんだ。

プロフィル

高橋陽一（たかはし・よういち）

　漫画家。南葛ＳＣ代表。代表作『キャプテン翼』は１９８０年に「週刊少年ジャンプ」の読み切り作品として掲載され、翌年から連載がスタート。シリーズ累計世界９０００万部を発行した。４０年以上続いた連載は４月に終了した。１９６０年生まれ。東京都葛飾区出身。

風間八宏（かざま・やひろ）

南葛ＳＣ監督兼テクニカルダイレクター。１９８４～８９年ドイツでプレーし、マツダＳＣ（現・サンフレッチェ広島）に入団。引退後は川崎フロンターレや名古屋グランパスの監督を歴任した。１９６１年生まれ。静岡県出身。