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ブレイキン・AMIの「パっと見ではわからない」すごみ、決勝でも相手を飲み込んだ「世界観」…[七瀬恋彩の目]

読売新聞 / 2024年8月10日 7時32分

ブレイキン女子の表彰式で金メダルを手に笑顔を見せる湯浅亜実(9日)=松本拓也撮影

 パリオリンピックは9日、新競技・ブレイキン女子が行われ、2022年世界選手権覇者の湯浅亜実(ダンサー名AMI)が金メダルを獲得した。

[七瀬恋彩の目]

 AMI選手は日本のBガールたちのトップランナーで憧れの存在だ。

 それは今回、金メダルを取ったからではない。若い世代のBガールならば誰もが憧れ、そしていつも見つめていたダンサーだ。オリンピックの舞台で、彼女が見せたものは”らしさ”そのものだとも言える。

 抽象的な話になるが、オーラがある。彼女の前に立つと、世界観に飲み込まれて対戦相手は普段のムーブができなくなる。決勝を戦った、リトアニアのドミニカ・バネビッチ選手(ダンサー名NICKA)もまさにそうだった。NICKA選手が中国選手と戦った準決勝は今大会のハイライトの一つで、お互いに全く譲らないエモーショナルなパワームーブの出し合いに、彼女の本領が発揮されていた。だが、決勝は違った。技の回転数が足りなかったり、きれいに着地が決まらなったり、決勝という緊張感があったにしても、やはり本来の動きとは言えなかった。

 対して、AMI選手は、落ち着き払ったステージングだった。彼女の技は「パッと見ただけではわからない」。すごいことをやっているのだけれど、自然に見えるというのは、豊富な経験がなせる業だ。技術的に見れば、立ち技のトップロックから床に手をつけてのフットワーク、そして背中を床につけてのバックロックと「高・中・低」という高さの切り替えがスムーズで美しい。決勝3ラウンド目の演技の最後に見せた、片手のAトラックスから「ハイチェア」を決めたのも圧巻だった。それまでのバトルで見せなかった高難度のこの技を、最後の最後に決め切ることができる体力、精神力こそ、AMI選手の強さだ。

AYUMIの勝敗を分けたものは…

 準々決勝で敗退した福島あゆみ選手(ダンサー名AYUMI)もハイレベルなダンスを披露していた。「本当にオリンピックの会場で踊っているのだろうか」と感じさせるような落ち着き。そして、1つのムーブに様々なネタを織り込むボキャブラリーの豊富さは世界屈指だ。

 敗れた試合の相手は、パワームーブを中心に押すタイプだった。こうしたダンサーには、相手が苦手な繊細な動きを決め切ることが定石だが、AYUMI選手がフリーズを決めきれないなど、普段は起こらない失敗があり、精彩を欠いたことが痛かった。だが、接戦だったことは間違いない。

 オリンピックで初採用されたブレイキン。大会前は、日本勢、とりわけ女子が強いという下馬評だった。そして、その下馬評通りに金メダルを取った。日本中のBガール、Bボーイは「やっぱり、これがAMI選手だ」とひざを打ったはずだ。

 新競技に採用されたことでブレイキンは大きな話題になった。2028年のロサンゼルス大会では実施されないのは残念だが、今回の金メダルが日本のブレイキン界をさらに盛り上げるニュースであることは間違いない。

プロフィル

七瀬恋彩(ななせ・ここあ)――ダンサー名、COCOA。2003年生まれ東京都出身。ブレイクダンスを主とするプロダンスチーム「コーセー・エイトロックス」に所属し、タレント・女優としても活動。8歳からブレイクダンスを始め、ダンスショーやダンスバトルにて多数の受賞経験を持つ。ダンスと個性的なロングヘアを特徴としたSNSを発信し、総フォロワー数は200万人を超える。

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