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「マカロン王子」樋口黎、50g体重超過で失格の憂き目も…「命を燃やす」と減量に耐え金メダル

読売新聞 / 2024年8月10日 13時0分

レスリング男子フリースタイル57キロ級で金メダルを獲得し、喜ぶ樋口黎選手(9日、パリで)=守谷遼平撮影

 過酷な減量に耐え抜き、栄冠をつかみ取った。レスリング男子フリースタイル57キロ級で優勝した樋口 れい選手(28)は、東京五輪の予選で、体重超過による失格を経験。失敗を糧に表彰台の真ん中に立って言った。「簡単な道のりではなかった」(上田惇史)

 リオデジャネイロ五輪で鋭いタックルを武器に銀メダルを獲得した。甘い物が大好物の20歳の若者は、好きな菓子の名前から「マカロン王子」と呼ばれた。

 食事には気を使っていなかった。スターバックスで生クリームたっぷりの「フラペチーノ」を飲み、マクドナルドにも通った。

 飛躍を目指した東京五輪への道のりに、落とし穴があった。勝ち抜けば代表入りが決まる2021年4月のアジア予選。体重が50グラム超過して失格になった。その後のプレーオフでも、ライバルに敗れた。

 「パリで金メダルを取るため、生活の全てをささげる」と誓った。身長1メートル64の鍛え上げられた肉体は、何もしないと65キロになる。厳しい減量をしたうえで、さらに卵1個分の50グラムをどう削り出すか。

 独学で減量方法を学び始めた。参考にしたのが動画投稿サイトでボディービルダーが紹介していた手法。脂質、炭水化物、たんぱく質の最適な摂取法を大会ごとに変えながら探った。

 普段から食生活に気を配り、カロリーを計算するようになった。鶏皮を外して調理し、不必要なものは極力、口にしない。サプリメントで栄養を補い、好物の甘い物も控えた。「過去は振り返らない」と減量の苦しさについて、多くを語ろうとはしない。

 妻の優貴さん(29)は、ずっと見てきた。頬はこけ、目はうつろ。水さえ口にせず、話しかけても返事はない――。大会直前、夫はそんな状態になりながら、マットに上がってきた。

 「これだけ苦しんでいるんだから、どうか報われてほしい」。夫に食べる姿を見せまいと、近所のコンビニの中で、夕食をすませることもあった。

 「命を燃やす」と誓って迎えた今大会。初戦の前日は、1・5キロほど体重が超過していた。サウナに何度も入って汗を流し、何とか計量に間に合わせた。同じ過ちを繰り返すわけにはいかなかった。

 「挫折と絶望を味わってきたけど、自分を信じてやってきた。僕一人で取れた金メダルだとは思わない」。辛酸をなめたレスリング人生。周囲への感謝の言葉ばかりが口をついた。

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