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ウクライナがロシア西部に最大規模の越境攻撃、外交交渉を有利に進める狙い…ガス関連施設を制圧

読売新聞 / 2024年8月10日 19時41分

7日、露西部クルスク州スジャで、ウクライナ軍の越境攻撃後に撮影された燃える建物=MIC Izvestia提供、ロイター

 ロシア軍に押され気味だったウクライナ軍が、国境を越えて露西部クルスク州への侵攻を続けている。兵力不足の中、過去最大規模の越境攻撃に踏み切ったのは、将来のロシアとの交渉を優位に進める狙いがある。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は外交解決の容認姿勢を見せるなど、交渉への地ならしも始めている。

 ウクライナ軍の第61機械化旅団は9日、露国営ガスプロム施設前でウクライナ国旗を掲げ「スジャはウクライナ軍の管理下にある。ガスプロムの施設も制圧された」と宣言する動画をSNSに投稿した。クルスク州スジャは国境から10キロ・メートルほどロシア側に入った町でガスパイプラインの中継拠点がある。

 ロイター通信によれば、昨年、欧州向け露産天然ガス輸出の約半分にあたる約146・5億立方メートルのガスがスジャ経由で供給された。

 ウクライナ軍は6日、越境攻撃を開始。露メディアによれば、越境攻撃は今年3月にも露西部ベルゴロド州などでもあったが、侵略開始以来、ここまで大規模なのは初めてとみられる。

 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)はロシアが領土の「約350平方キロ・メートル」を失ったと分析。映像から米国やドイツ製の装甲車や兵器の使用も確認されたという。SNSには避難住民の車列やプーチン大統領に支援を求める住民の声などの動画が投稿されている。

 意表をつかれた形のプーチン政権は9日、増援部隊の派遣を決めた。米政策研究機関「戦争研究所」は同日、軍事ブロガーの分析として、露軍が5月に始めた北東部ハルキウ州北部への攻撃に参加していた部隊を移動させていると紹介した。前線に到着すれば、激しい戦闘が予想される。

 ウクライナは東部ドネツク州などで露軍の攻勢に苦しむ中、越境攻撃に踏み切った。元ウクライナ国防相はFTの取材に「入念に準備された作戦だ」と明かした。クルスク州内に駐留すれば露軍の戦力分散や、露国民に戦争を実感させる効果が期待できるほか、将来のロシアとの交渉を有利に進める狙いがあるようだ。

 ゼレンスキー氏は7月、英BBCのインタビューで「全ての領土を武力で取り返す必要はない。ロシアに圧力をかけ、外交的な解決に合意することは可能だ」と発言した。交渉に応じない姿勢を転換し、領土奪還前に交渉開始の可能性を示唆したと受け止められた。

 軌道修正は内外の情勢を踏まえた決断だとみられる。ウクライナは昨年の反転攻勢が不発に終わり、領土奪還の道筋は見えない。調査研究機関「キーウ国際社会学研究所」が7月に公表した5月実施の世論調査では、戦闘終結のため「領土の一部を諦めることができる」が32%で、侵略開始後で最高になった。

 6月にスイスで開催された平和サミットでは、新興・途上国からロシアとの対話を求める声が相次いだ。米国では11月の大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領がロシアとの交渉に臨む姿勢を示している。ウクライナ側には、交渉開始時に少しでも有利な材料を手にしたいとの思惑がありそうだ。

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