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鈴木優花はロス少ない最適な走り…急坂対策の成果が感じられた[武井隆次の目]

読売新聞 / 2024年8月11日 18時53分

ゴール後、健闘をたたえ合う鈴木優花(左)と金メダルを獲得したシファン・ハッサン(オランダ)(11日)=ロイター

 パリオリンピックは最終日の11日、陸上の女子マラソンが行われ、五輪初出場の鈴木優花(第一生命グループ)が6位入賞を果たし、前回東京オリンピック8位の一山麻緒(資生堂)は51位だった。

 中盤に2度の急坂があるなど、五輪史上最もタフと言われるコースで行われた熱戦を、早稲田大時代に箱根駅伝で活躍し、2002年アジア大会男子マラソン銅メダリストの武井隆次さんが解説する。

鈴木、三度、追いつく粘り

 鈴木選手は考えられる最高のレースができた。外国勢の急なペースの上げ下げの中でも集団について、その中の後ろ目の位置に徹することができた。そこは金メダルのシファン・ハッサン選手(オランダ)も同じで、人の力を借りて、自分が力をロスしない最適な走りをしていた。上りが得意な鈴木選手、下りが得意なハッサン選手は追いつくポイントが違うので、2人で抜きつ、抜かれつのレースをしていた。起伏の大きなコースで、得意・不得意の差が如実にあらわれて、見ていて興味深かった

 鈴木は最大の難所である28キロからの急坂でも、地面に吸い付くようにひざを上げない摺り足のようなフォームで集団に食らいついた。蹴るのではなく、押し出すような、車のローギアのような脚運びだった。例えれば、前傾の競歩という感じで、上り対策の練習の成果が感じられた。

 いったん集団から離されても、35キロ付近では 三度 (みたび)、追いつく粘りも発揮した。惜しかったのは、追いついたところですぐに集団がペースを上げ、最後は離されてしまったこと。ペースになじむ間がなかったのは不運だった。あのタイミングでなければ、最後でもう少し粘れたかもしれない。

一山は万全な状態で臨めなかったか?

 一山麻緒選手は、前半の最初の急坂に入る時点で先頭から離されて、追う展開になってしまった。東京五輪8位の実績からすれば、万全な状態で臨めなかったのかもしれない。

ハッサン、常識からは考えられない走り

 優勝したハッサン選手は、今大会ですでに5000メートル、1万メートルを走って、1万のレースからわずか2日後のマラソンだった。日頃のトレーニングでそれだけのものを蓄えているのだろうが、3種目ですべてメダルを獲得した。男女の枠を超えて、長距離ランナーの常識からは考えられない走りを見せた。

補欠の制度の意味を問い直すべき

 最後に、レース前日に前田穂南選手(天満屋)の欠場が発表されたことについて。補欠の制度があるのなら、補欠選手を解除する期限の日までに組織として決断しなければいけない話だった。前日の男子で優勝したタミラト・トラ選手(エチオピア)は補欠で、直前の交代で出場して結果を出した。解除期限の前の時点で身体に何らかの違和感があったのなら、それをチームで情報共有しなければいけなかったと思うし、精密検査もその時点で行うべきだった。選手にも日本チームにも残念なことだったが、制度の意味を問い直すべきだろう。

たけい・りゅうじ 1971年生まれ。東京・国学院久我山高で高校初の5000メートル13分台をマーク。早大時代は箱根駅伝で4年連続区間賞(1区、1区、4区、7区)、うち3度が区間新記録で、同期の花田勝彦、櫛部静二と並び「三羽がらす」と呼ばれた。卒業後はエスビー食品で2002年びわ湖毎日マラソンを2時間8分35秒で優勝。02年アジア大会男子マラソン銅メダル。引退後はエスビー食品のコーチ、監督を歴任。現在は「したまちアスリートクラブ」の監督として小、中学生を中心とした後進ランナーの指導にあたっている。

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