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県立博物館の「保管スペースが足りない」、4000点が収蔵庫外に…午後5時以降は空調もストップ

読売新聞 / 2024年8月12日 14時0分

午後5時以降は空調が切られる生物資料の収蔵庫で、「このままでは温湿度基準を満たせない」と訴える渡辺さん

 盛岡市の県立博物館で、動物の 剥製 はくせいなどを収蔵するスペースが不足し、適切に保管できない状況が続いている。地域住民などからの寄贈が絶えない中、約4000点の資料が温度や湿度の調整が利かない廊下などに置かれ、収蔵庫内も経費節減のため空調を稼働できない時間帯がある。学芸員らは「標本の数に見合ったスペースと予算が必要だ」と訴える。(広瀬航太郎)

 県立博物館の地下収蔵庫へと続く廊下には、片側を埋め尽くすように、紙のシートで覆われたハゲワシの剥製やミンククジラの骨などが置かれている。主任専門学芸員の渡辺修二さん(49)は「本来は収蔵庫で保管すべきものだが、どうしてもスペースが足りない」と頭を抱える。

 1980年に開館した同館には約37万点の資料があり、そのうち約6割を動物の剥製や昆虫の標本など自然史部門の生物系が占める。スペースの都合上、常設展示として来館者の目に触れる資料は約2000点に限られる。自然史部門の三つの収蔵庫は計約700平方メートルの広さがあるが、いずれも満杯で、収蔵庫の外にあふれ出した資料は約4000点に上る。

 博物館法では、博物館の主な役割を「資料の収集」「保管」などと規定。同館もこれに基づき、「県産標本の寄贈を受けた場合、置き場がなくても受け取る」ことを原則としているため、自然史部門の資料が増え続けている。昨年度、同館のコレクションには自然史部門の資料が約5800点寄贈された。

 岩石や化石を担当する主任専門学芸調査員の佐藤修一郎さん(46)も「近年は鉱山に足を踏み入れることが難しく、コレクターから資料を集めるしかない」と実情を打ち明ける。

 収蔵庫内に置かれた資料の維持管理も課題だ。文化財保存修復研究国際センターの基準では、自然史資料の収蔵庫は室温20度、湿度60%前後に保たれるのが最適とされる。

 しかし、同館でかつて24時間稼働していた空調設備は、予算削減の流れで少なくとも過去約10年間、午後5時以降は切られるように。渡辺さんは「温湿度が上がると貴重な標本にカビや虫が発生し、剥製からは油がしみ出る可能性がある」と不安を募らせる。

 同館では苦境を逆手に取り、先月から空調の利いた展示室の一角を収蔵スペースに変更。博物館資料がどのように保管されているかを「見える化」し、スペース不足の解消につなげた。

 昨年度の来館者数は1996年度以降最多の約7万5000人を記録。渡辺さんは「この勢いで博物館の存在感を高め、収蔵設備の増強を訴えていきたい」と話している。

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