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1対1のディフェンスで絶対王者を苦しめたフランス…最後は力技で面目保ったアメリカ[萩原美樹子さんの目]

読売新聞 / 2024年8月12日 7時56分

アメリカのウィルソン(右)とフランスのバディアヌ(左)の攻防=AP

 パリオリンピックのバスケットボール女子は最終日の11日に決勝が行われ、アメリカがフランスに67-66で競り勝ってオリンピック8連覇を達成した。フランスが王者・アメリカを最後まで苦しめた試合を、日本人初のアメリカ女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)プレーヤーで、五輪でも活躍した元日本代表・萩原美樹子さんが解説する。

重点強化のディフェンスが素晴らしかった

 敗れたとはいえ、フランスのディフェンスが素晴らしかった。東京オリンピックで銅メダルの後、自国開催に向けてチーム改革に着手し、ヘッドコーチを替え、主軸のベテランセンターの代わりに若手を招集した。時間をかけて育成・強化をしてきた主眼はディフェンスで、今大会前の五輪世界最終予選では、得点力の高い中国を50点に抑えている。この結果は衝撃的で、フランスはすごくディフェンシブなチームになったなと感じたものだ。

 今大会のフランスの武器も、そのディフェンス。守りを頑張るガードの選手を選び、決勝でもバックコートからしつこくプレッシャーをかけ、相手のターンオーバーを誘って得点を稼いだ。アメリカのターンオーバーは前半だけで13個。信じられない数だ。

 体格はほぼ互角で、ファウルを怖がらずにフィジカルに1対1を守ったことで、アメリカは嫌がり、フラストレーションがたまっていった。

 大会で、最もハーフコートのバスケットが洗練されていたのはベルギーだった。日本を応援していたのはもちろんだが、ベルギーにしろ、フランスにしろ、ここ数年で絶対王者のアメリカを脅かすチームが出てきた。決勝戦の幕切れ、第4クオーターの最後で3点を追うフランスが速攻で放ったブザービーターは、選手の足の先が3点シュートラインをわずかに踏み越えて2点になってしまったが、あのシュートがもう半歩後ろだったなら歴史が変わったかもしれない。アメリカは冷や汗ものだったと思う。

組織プレーが苦手なアメリカの五輪事情

 そういうチームに見られた、組織立ったオフェンスをアメリカは組み立てる時間がない。選手は全員WNBAに所属し、リーグが五輪開幕前のぎりぎりまで行われているという事情がある。代表活動期間が短くて組織の連係を高められない分を、個の力で補うのが毎回の五輪の戦いでもある。ベンチから組織プレーを指示されても、ボールとスクリーンのタイミングが合わない。準備期間がないところに、1対1で守られてしまったことが苦戦の大きな要因だった。フィールドゴール成功率が試合全体で34%なんて、見たことがない数字だ。

 コーチの目線でいうと、アメリカには面白いセットや、組織立ったプレーがあるわけではないが、最後は力技でフランスをねじ伏せ、これが強さだと感じた。ベテラン重視のチーム編成だったが、若手のガードが出ていた時間帯にも良いプレーがあったし、国内には代表予備軍の有望な若手もたくさんいる。今回は「五輪の経験値」という基準でメンバーを選んだのだろうが、そろそろ世代交代があってもいい。4年後のロサンゼルス大会に向けて、アメリカもプライドをかけて強化を図るだろう。

はぎわら・みきこ 1970年福島市生まれ。10歳からバスケットを始める。県立福島女子高校(現・県立橘高校)卒業後、89年に共同石油(現ENEOS)入社。93年から4年連続日本リーグ得点王。96年アトランタ五輪代表で7位入賞(得点ランキング5位)、97~98年に日本人では初めてWNBAでプレー。99年に現役引退し、04年アテネ五輪で女子日本代表アシスタントコーチ。15年から日本バスケットボール協会女子ジュニア専任コーチとして、U19女子ワールドカップ4位入賞など。21年からWリーグ・東京羽田ヴィッキーズHC。

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