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「20年前は想像できない盛り上がり」地方競馬、低迷期乗り越えV字回復…カギはスマホと新型コロナ 

読売新聞 / 2024年8月12日 5時0分

 地方競馬の売り上げがV字回復している。赤字続きで自治体の「お荷物」とまで言われた低迷期を乗り越え、2022年度は全国15競馬場の売り上げ(売得金)の合計が初めて1兆円を超えた。主な要因は、スマートフォンと新型コロナだ。

浦和来場者1万人 スタンド埋める

 さいたま市南区の浦和競馬場で6月19日、重賞レース「さきたま杯」が行われた。今年からレースの格付けが上がり、賞金が増えたことから日本中央競馬会(JRA)から実力馬が参戦。平日夕方にもかかわらずスタンドは1万人もの立ち見客らで埋まった。この日の売得金は前年比23.1%増の29億3074万円。運営する埼玉県浦和競馬組合総務課の関隆介主任は「20年前には想像できないほどの盛り上がり。若い人や女性が増えた」とホクホク顔だ。

 競馬には中央競馬と、1948年施行の競馬法で競馬の主催を地方公共団体と定めたことで始まった現行の地方競馬がある。

 地方競馬は戦後復興が目的で、売り上げの一部は運営自治体に還元された。現在も「主催者収益金」として自治体予算に繰り入れられ、子育て支援など様々な施策に使われている。2022年度の主催者収益金は、全国で202億円だった。

 地方競馬全国協会(NAR)によると、売得金はバブル経済期だった1991年度の9862億円を境に景気低迷やレジャーの多様化などで下がり続け、2011年度には3314億円まで落ち込んだ。主催者収益金は「0円」になり、累積赤字は膨らむ一方で、00年度から12年度までに13の地方競馬場が廃止された。

 潮目が変わったのは、その11年度。NARは全国の地方競馬場に共同システムを導入し、専用サイトから各地の馬券を購入できるようにした。

 ネット購入は02年度に始まっていたが、主催団体ごとにシステムがバラバラだった。12年度にはJRAのサイトから地方競馬の馬券を買えるようになり、スマートフォンの普及も追い風となった。

 そして、コロナ禍。ネット購入が「巣ごもり需要」にマッチし、20年度の売得金は前年度比30%増。約93%がネットからの購入だった。翌21年度には30年ぶりに売得金の記録を更新した。

高知・一発逆転レース 回復の「象徴」

 V字回復の「象徴」とされているのが、一時は廃止も検討された高知競馬。00年代に連敗記録が話題になったハルウララ人気はあったが、回復のきっかけは全国に先立ち、09年度から通年開催を始めたナイターレース「 夜さ恋 よこいナイター」だ。午後9時頃の最終レースとして行われる成績不振の馬を集めた「一発逆転ファイナルレース」は、予想が難解で高配当が期待できるとして全国から注目された。

 23年度の売得金は958億円。ナイター開始前年の08年度から約25倍になった。高知県競馬組合の松本太一事務局次長は「どうすれば売り上げが伸びるか工夫してきた。ネット販売拡大の波に乗れた」と語る。

集客へ各地工夫

 各地方競馬は、ネットから入ったファンをどう競馬場に呼び込むかに知恵を絞る。

 船橋競馬場(千葉県船橋市)は、20年度から総額約150億円かけて大規模改修を実施し、4月に8人用のボックス席や靴を脱いでくつろげる「フラットルーム」を設けた新スタンドが完成。今年度中には競馬場周辺を芝生公園化する予定だ。

 川崎競馬場(川崎市)は、コース内の芝生広場でバーベキューができたり、場内の大型画面で映画を上映したりと、家族連れ向けのサービスが充実。世界で唯一、「ばん馬」と呼ばれる大型馬が重いそりを引く「ばんえい競馬」を開催する帯広競馬場(北海道帯広市)では、ばん馬と触れ合える動物園が人気だ。

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