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航空燃料不足 訪日客増の障害にならぬよう

読売新聞 / 2024年8月12日 5時0分

 国内の地方空港で航空機の燃料が不足し、新規の就航や増便を断念する事例が相次いでいる。訪日客を増やす障害にならぬよう、官民が連携して対応策を実行してもらいたい。

 コロナ禍で落ち込んだ訪日外国人客数は、近年、急速に回復している。2023年は前年比で6・5倍となった。今年上半期も6割以上伸びて1777万人となり、過去最多を記録した。

 日本への新たな就航や増便を希望する海外の航空会社は多い。

 ところが、国土交通省の調査によると、日本でジェット燃料を確保できないことを理由に、就航・増便を断念した事例が、全国15空港で計週140便もあった。特に北海道や九州などで目立っていることが懸念される。

 海外からの航空機は通常、片道分の燃料しか積んでおらず、日本で復路分の燃料を補給する。訪日客数の増加に伴って航空便の発着数が増えたことにより、空港側でジェット燃料が不足し、新規の需要に応じられないためだ。

 燃料不足により、訪日客を誘致する機会を失っている痛手は大きい。放置できない状況である。

 背景には、国内の石油精製能力の減少があるという。

 石油元売り各社は近年、脱炭素の潮流の下、ガソリン需要が低下し、製油所の統廃合を急ピッチで進めてきた。その結果、今春のジェット燃料の生産量は、5年前と比べ3割以上も減った。

 生産量を増やすにしても、原油を精製する過程で、ガソリンや軽油などとともに作られるジェット燃料だけを、大幅に増産することは難しいとされる。

 さらに、製油所の統廃合で空港までの輸送距離が長くなったが、海運も陸運も人手不足により対応が難しくなっているという。

 このため、政府は緊急対策をまとめた。短期的な対策として、石油元売り各社などが海外からの燃料輸入を拡大する。海運業界は国際航路で使う輸送船の国内転用を進め、輸送体制の強化を図る。

 中長期の対策としては、空港などの燃料タンクの増強や、国内輸送船の大型化などを示した。

 燃料不足は、訪日客の拡大と受け入れ体制の強化を図る際、省庁間の総合調整を欠いたことに一因がある。各省庁が縦割りを排し、民間と協力しながら、対策を着実に実施することが重要だ。

 また、脱炭素と観光立国の両立に向けては、廃油などを原料とし、環境に優しい次世代燃料「SAF」の普及も進めてほしい。

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