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気象衛星「ひまわり」、反射光や放射熱など捉える16種のセンサー持ち30以上の国・地域が活用

読売新聞 / 2024年8月13日 5時0分

 テレビのお天気コーナーでおなじみの気象庁の静止気象衛星「ひまわり」は約半世紀の間、代替わりを重ねながら雲や水蒸気などの克明な動きを捉え、地球に届けてきた。気象レーダー、地域気象観測システム(アメダス)と並び、天気予報に欠かせない「三種の神器」だ。ひまわりの知られざる働きを紹介する。

台風監視は重要ミッション

 「台風の 芽も目も監視 宇宙の眼」。これは現在運用中の9号が打ち上げられた2016年、宇宙航空研究開発機構( JAXA ジャクサ)が募集した川柳の入選作だ。ひまわりの一番の役割は気象データの収集。中でも災害を招く台風の監視は重要ミッションだ。

 ひまわりは赤道上空約3万5800キロの宇宙空間をほぼ24時間周期で回り、自転する地球からは静止しているように見える。その姿が太陽を向いて大輪を咲かせるヒマワリをイメージさせるとして、命名されたという。

 9号の要は、太陽の反射光や地表の放射熱などの様々な波長を捉える16種のセンサーだ。地上からでは観測が難しい気象現象も捉え、2000キロ四方を2分半で観測する処理速度は世界の同種衛星の中で群を抜く。

 観測範囲は東アジアやオセアニアを中心とする地球の約4分の1に及ぶ。データは気象庁が無料公開しており、30以上の国や地域が活用。天気予報や熱帯低気圧の進路予測などに役立てられ、国際貢献にもつながっている。19~20年の大規模森林火災で発生域の特定にデータを活用したオーストラリア気象局のアグネス・レーンさんは「非常に重要な存在」と感謝する。

初代は77年誕生

 ひまわり誕生のきっかけは1960年代まで遡る。気象予測の高度化への期待が高まったことを受け、世界気象機関(WMO)が「世界気象監視計画」を提唱。静止気象衛星5基と北極と南極の上空を回る極軌道衛星2基からなる世界的な観測網の構築に乗り出した。日本はうち1基の開発を委ねられた。

 当時、三種の神器のうち観測に使われていたのは気象レーダーのみ。その観測範囲は、設置された山頂などから半径300キロ程度に限られることが多く、雨や雪のデータは電報の文字情報で気象台に伝える仕組みだった。

 札幌管区気象台長などを務めた古川武彦さん(84)は「毎年不意打ちのように台風に襲われた」と振り返る。5000人超が犠牲になった伊勢湾台風(1959年)など災害が頻発し、正確で早い画像情報が求められていた。

 ひまわりの開発にはJAXAの前身・宇宙開発事業団が協力。主要部品の製造は米国のメーカーが担った。1号は円筒形の本体をコマのように回転させて姿勢を保つスピン型で、77年7月、米ケネディ宇宙センターから打ち上げられた。画像撮影にも成功し、古川さんは「ようやく台風に立ち向かう切り札ができ、いたく感動した」と懐かしむ。

2015年に画像カラー化、紅葉の進み具合も判別可能に

 ひまわりはその後3~10年ごとに代替わりし、性能面で進化を続けてきた。とりわけ2015年に運用が始まった8号からは画像がカラー化。センサーの種類も3倍以上に増え、黄砂や流氷の分布、紅葉の進み具合なども見分けられるようになった。

 近年は災害が激甚化しており、29年度にも運用が始まる10号は水蒸気、気温、風を3次元で捉えられる最新式のセンサーを搭載予定だ。大気の構造を広範囲で立体的に観測できれば、線状降水帯の発生予測エリアや台風の暴風警戒域を絞り込めるという。整備費は過去最高の800億円超の見通しだ。

 気象庁気象衛星課の橋本祐樹さんは「10号のデータは農業や漁業、エネルギーといった分野でも活用できる。防災、減災だけでなく、多様な社会課題の解決に役立てたい」と夢を語る。

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