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移民問題の象徴・パリ郊外、五輪の遺産で進む開発…「道路やプールで貧困状態は変わらない」との声も

読売新聞 / 2024年8月12日 22時59分

 【パリ=梁田真樹子】11日閉幕のパリ五輪を機に、開催国フランスは、治安の悪さや貧困率の高さから「移民問題の象徴」とされるパリ郊外の開発を加速する。ハコモノ中心の開発が、移民系住民が抱える経済格差の是正につながるかどうかは見通せない。

 パリ中心部から地下鉄と路面電車を乗り継いで1時間弱のセーヌ・サンドニ県北西部デュニーには、大会期間中のメディア関係者用宿舎がある。約20棟の建物は今後、住宅として販売される。周辺では公園や小学校も整備が進む。

 近くの五輪競技会場はスポーツクライミング用だけだが、一連の事業は仏政府や同県が実現を求め、大会関連の建設事業を担う公社が手がけている。同県の担当課長のピエール・ガコネ氏は、「県内の広い範囲に大会のレガシー(遺産)を残したい」と説明する。

 公社は大会組織委と別に約44億ユーロ(約7041億円)の予算を持ち、約75%を同県に充てる。メディア関係者用宿舎に加えて選手村も建設され、今後、地元の移民系住民らが抱える住宅不足の解消に充てられる。学校や体育施設などの教育資源も不足気味で、子どもの7割程度が泳げない中、プールの建設も各地で進む。マクロン仏大統領は7月下旬、選手村を訪問し、「大会によって、県を変える遺産となる様々なインフラを整備した」と強調した。

 背景にあるのは、移民系住民の貧困だ。仏国立統計経済研究所によると、2015年時点で同県での移民比率は30%で全国1位。貧困率は全国平均の2倍に上る。18~24歳の若者の3割近くが就業も職業訓練もしていなかった。

 地元では1960~70年代、経済成長を支える労働力として、アフリカの旧植民地などから移民を大量に受け入れた。格差や差別感情から社会への不満を募らせる移民子弟は、80年頃から度々暴動などを起こした。

 1998年のサッカーワールドカップにあわせ、県内に国立競技場が設けられたが周辺の経済や治安は改善していない。2022年には、サッカーの国際試合で地元少年とみられる窃盗団が紛れ込み警察が催涙ガスを放った。昨夏も全国に広がった暴動の中心となった。

 同県で進む開発が、こうした状況への処方箋となるかどうかについて、懐疑的な見方が強い。

 仏国立社会科学高等研究学院・日仏財団のアレクサンドル・フォール研究員は今月上旬、仏ラジオの取材に対し、「雇用条件や教育の改善がなければ問題の根本解決は難しい」と指摘した。仏紙ル・モンドは、「道路やプールが整備されても貧困状態は変わらず、住民は少しお金があれば食べることに費やす」とする同県出身の元五輪代表選手の見解を伝えた。

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