広陵 ここぞの内角直球

１失点完投した広陵の高尾＝後藤嘉信撮影

　第１０６回全国高校野球大会第６日の１２日、２回戦が始まり、４試合が行われた。東海大相模（神奈川）は富山商（富山）を零封して、出場３大会連続の初戦突破を果たした。広陵（広島）は熊本工（熊本）との接戦を制し、明徳義塾（高知）は鳥取城北（鳥取）に快勝。関東一（東東京）は北陸（福井）に逆転勝利した。

広陵２―１熊本工

　広陵が逆転勝ち。１点を追う七回に浜本の２点打で試合をひっくり返した。先発した高尾が１失点完投。熊本工は九回に好機を作ったがものにできず、好投の山本を援護できなかった。

９回ピンチ　抜群の制球力

　ここ一番で投げるため、広陵・高尾は最高の１球を残していた。九回一死二、三塁。一打サヨナラのピンチにも、エースナンバーを背負って４季連続となる甲子園で学んだものがあった。

　「大事な場面で投げる不意の内角攻めは有効。終盤のピンチを想定して、序盤は外角を攻めていた」

　１ボール、２ストライクからの５球目。高尾は左打者の山口悠を、この日最速の１４６キロの内角直球で見逃し三振に仕留めた。「ここ一番」の残像を使い、続く代打山口光は縦に落ちる変化球で空振り三振に切って取り、試合を終わらせた。

　苦い記憶がある。今春の選抜２回戦の青森山田（青森）戦では、七回まで無安打投球を続けながら、初安打を許した八回に連続四球を与えるなどして、そこから６失点と崩れた。安定した制球力を求め、体の軸がぶれないように、左足をゆっくりと低く上げるフォームに改善した。

　熊本工・田島監督は「九回にあの投球はすごい。あんな球、初めて見たんじゃないか」と脱帽。広陵の中井監督は「あれが彼の投球術。ここぞという時にあの球を投げる」と絶賛した。

　甲子園では、２年春の４強が最高成績。その後は２度とも２勝目にたどり着けないでいる。「最少失点に抑えてチームを勝たせる」。高尾が投手としての哲学を披露する舞台が、佳境を迎える。（古島弘章）

広陵・中井監督「（七回に逆転打を放った）浜本はよく打ってくれた。（監督として甲子園４０勝目に）広島弁で言うと、ぶち（すごく）うれしい。（ヘルメットとアンダーシャツを）白に変えて勝ててよかった」

◆広陵・中井哲之監督が春夏通算４０勝

　１２日の２回戦、熊本工戦で達成。茨城の取手二や常総学院で３度甲子園を制した木内幸男氏、東邦（愛知）で選抜優勝経験のある阪口慶三氏に並んだ。１位は大阪桐蔭（大阪）の西谷浩一監督の７０勝。

熊本工の捕手　巧みなリード

　終盤まで１点勝負に持ち込んだ熊本工を支えたのは捕手の吉岡。制球力の高い２年生右腕・山本の変化球を低めに集めるリードで、広陵打線を打たせて取った。試合中に右肘を痛めながら盗塁を刺すなど、扇の要として十分の働きを見せた。ただ、七回に高めに浮いたスライダーを狙われて逆転打を許し、「山本を引っ張ることができなかった」と悔やんだ。

熊本工・田島監督「（先発の）山本も高尾君に引けをとらない良い投球をしてくれた。夏の大会の１試合、１試合で成長してくれた」