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パリ自体がスタジアム・バーのテレビで歓声…「誇り」「連帯」演出の五輪、幻影にするな

読売新聞 / 2024年8月12日 23時47分

 パリ五輪開催国フランスのマクロン大統領は、閉会式終了直後の12日未明、X(旧ツイッター)に「フランスは誇らしく思う」と投稿し、大会が成功したとの認識を強調した。

 フランスが今回の大会で目指したのは、自国の「誇り」と国内の「連帯」を示すことだった。

 大会史上初めてとなる競技場外での開会式を、歴史的建造物を望むパリ中心部のセーヌ川で開催した。自由や平等をうたう人権宣言が採択されたフランス革命以降、女性や性的少数者(LGBT)の権利向上を進めた自国の歴史を称揚する演出を行った。

 町中心部での競技実施は盛り上がりに貢献した。「パリ自体が大きなスタジアム」(ラジオ局フランス・アンフォ)と称され、国民の自尊心と一体感を高めた。柔道で3度目の優勝を果たした海外県出身のテディ・リネールら自国選手の活躍を見ようと、市民らはテレビのあるバーなどに詰めかけ、歓声を上げた。

 誇りや連帯を強調するのは、増加する移民や極右系の台頭を背景に、仏社会で様々な分断が深まっていることへの危機感の裏返しだ。

 経済的な困難を抱える移民系住民が多いパリ郊外の競技会場周辺では、盛り上がる観客を横目に素通りする移民系住民の姿も多くみられた。

 6~7月の国民議会(下院)選挙では、極右の流れをくみ、移民の規制強化を訴える「国民連合」が躍進した一方、急進左派政党が主導する政党連合が最大勢力となった。政治的な二極化が進む可能性が高い。仏メディアでは、「国が分裂するほど、人は夢や逃避を求める」とする専門家の見方が紹介された。

 仏憲法は、人種や出自、宗教で人を区分しない「不可分の共和国」をうたう。フランスには、誇りと連帯を演出した五輪がつかの間の幻影に終わらないよう、国家の根幹を揺るがす分断の現実と正面から向き合ってほしい。

(パリ支局長 梁田真樹子)

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