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金原瑞人さん 「漫画とアニメ漬け」から、詩歌に夢中に

読売新聞 / 2024年8月16日 15時15分

『石原吉郎全集I』石原吉郎著(花神社) 品切れ

 漫画とアニメ漬けの子どもだった。楳図かずお「半魚人」や「へび少女」、横山光輝「伊賀の影丸」、白土三平「サスケ」。もう少し成長してからは、「ガロ」や「COM」といった前衛的な漫画雑誌も集めていた。

 その後、自身の「ヤングアダルト」時代に夢中になったのが詩歌だ。

 中学生の頃は、『日本の詩歌』(当時の中央公論社刊)で様々な詩歌に触れた。島崎藤村のロマンチックな雰囲気、石川啄木のセンチメンタルな風情に かれ、何度も読み返した。

 「一人でこっそり、万年筆を使って下手な字でノートに書き写していました。年頃の男の子が詩を読んで書き写しているなんて、恥ずかしくて周りには絶対に言えない。数年前、(歌人の)穂村弘さんとの対談で、詩の書き写しを初めて告白しました。言えるようになるまで半世紀かかりましたね」

極限下で生と死を見つめた詩人にはまる

 大学浪人中、詩歌への興味は一度薄れる。大学院生の頃に「いきなりはまった」のが、戦後を代表する詩人の一人、石原吉郎(1915~77年)だ。東京都内の古書店で、店の奥にある日本文学の棚に数冊置いてあったのをよく覚えている。一冊買って家で読みふけり、翌日、店に戻って残っていた本を全て買った。

 「とにかく暗く寂しく、絶望と裏合わせのつぶやきが響いてくる。でも、センチメンタルで妙に人懐っこい。詩が安っぽくなく、胸に刺さってくるんです」

 第2次世界大戦に出征した石原は戦後、8年にわたるシベリア抑留の体験をもとに、極限下での人間の生と死を見つめた。

 花であることでしか
 拮抗できない外部というものが
 なければならぬ
 花へおしかぶさる重みを
 花のかたちのまま
 おしかえす
 そのとき花であることは
 もはや ひとつの宣言である
 (「花であること」から抜粋)

 お気に入りの詩はパソコンで打ち出して保存し、大学の授業でも使っている。

 「孤島に一冊持っていくなら、絶対に『石原吉郎全集』です」。いつでも読み返せるよう、自宅と大学の研究室に何冊も置いてあるという。(小杉千尋)

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