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20年で8000人以上の命救ったAED、決めては「判断に迷ったら使う」

読売新聞 / 2024年8月14日 5時0分

 駅、劇場、商業施設など大勢が集まる公共の場で必ず目にする「AED」の3文字。停止した心臓を電気ショックで再び動かす「自動体外式除細動器」のことだ。医療・救急関係者以外の一般人も使用できるようになってから7月でちょうど20年が経過し、この間に8000人以上の命が救われたとみられる。

生存率アップ救命8000人以上

 AEDは自動体外式除細動器の英語「Automated External Defibrillator」の略。心臓がけいれんした状態を医学用語で「心室細動」といい、それを取り除く「除細動」を行う。AEDが入ったケースの蓋を開けると、操作方法を指示する音声が流れ、倒れた人の胸の2か所に電極パッドを貼り付けて電気ショックの必要性を機器が判断する。「必要」となれば、電気ショックを与えるボタンを押すよう音声で指示される。

 心停止後、再び心臓が動かなければ救命率は1分ごとに約10%ずつ低下するとされる。一方、2022年の救急車の現場到着時間(全国平均)は通報から10分20秒ほど。救急車到着までに一般人がAEDを使えるかどうかで大きな差が出る。

 22年に一般人がAEDを使用した場合の1か月後の生存率は50.3%。AEDが使われず、通報だけだった場合(6.6%)や、通報と心肺蘇生だけだった場合(9.9%)を大きく上回る。1か月後の生存者数は、22年末までの累計で7656人。集計中の23年分を加えれば、8000人以上と見込まれる。

 一般人がAEDを使えるようになったのは、高円宮さま(当時47歳)が02年11月、東京のカナダ大使公邸でスカッシュの練習中に急逝された事故がきっかけだ。カナダ大使らが心肺蘇生を行い、救急車も通報から約5分で到着。最善の処置が施されたが間に合わなかった。

 「すぐにAEDを使えていたら……」。日本循環器学会は翌月、医師や航空機乗務員らに使用が限定されていたAEDを、誰でも使用できるようにするべきだと提言。厚生労働省が04年7月に一般使用を解禁した。翌年の愛知万博では約100台のAEDが300メートルごとに設置され、半年間の開催中、4人が救命されて認知度が一気に高まった。

 ただ、使用を迷うケースもあり、さいたま市の小学校では11年9月、6年生の桐田明日香さん(当時11歳)が駅伝練習直後に亡くなる事故が発生した。保健室にAEDはあったが、教師らは呼吸があると思い、「使う」という判断ができなかった。

 そこで生まれたのが、明日香さんの名前にちなんだAED使用の手引「ASUKAモデル」だ。さいたま市教育委員会が事故の翌年にまとめた。症状の判断に迷ったら使うことを促すのが特徴で、採用する教育現場が全国各地に広がっている。

 16年には「日本AED財団」(現在は公益財団法人)が発足し、全国で普及・啓発活動を展開中だ。子どもたちが自らAEDを使えるようにしようと、中学、高校と同様に小学校の次期学習指導要領にもAED学習を盛り込むよう、今秋にも文部科学省へ要望するという。

 今後の課題はAEDの使用をどう増やすかだ。22年に、心停止で倒れる瞬間を見た一般人が通報したケース(2万8834人)のうち、AEDが使われたのはわずか4.3%(1229人)。近くでAEDを見つけられなかったケースが多いが、「症状が悪化するのでは」といった使用への不安も背景にあるとみられる。

 明日香さんの母親で、ASUKAモデル策定に携わった 寿子 ひさこさん(53)は「次の行動を指示してくれるAEDの操作は簡単。症状の悪化もない。頼れる『ミニドクター』として、勇気を出して使ってほしい」と訴える。

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