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検察の取り調べ 威圧的な手法を招く自白偏重

読売新聞 / 2024年8月14日 5時0分

 検事が容疑者に暴言を吐き、無理に供述を得ようとする不当な取り調べが問題になっている。自白を過度に重視する捜査手法の見直しを急がなければならない。

 大阪地検特捜部が手がけた業務上横領事件で違法な取り調べをしたとして、大阪高裁が、事件の担当検事を特別公務員暴行陵虐罪に問う刑事裁判を開く決定をした。取り調べを巡り、検事を刑事裁判に付す決定は初めてとなる。

 検事は2019年、不動産開発会社の元部長を取り調べた際、机を たたいて「検察なめんなよ」「あなたは大罪人」と発言した。元部長は上司だった元社長の事件への関与を認め、特捜部はこの供述に沿って元社長を逮捕した。

 しかし、元社長の裁判では、元部長の供述の信用性が否定され、元社長は無罪が確定した。高裁は今回、検事が50分間にわたって元部長を責め立てた点を踏まえ、「威圧的、侮辱的な言動を続け、不法だ」と強く非難した。

 人格を攻撃し、容疑者を しゅくさせて、特捜部の見立てに沿った供述を得ようとしたのだろう。事件の真相を解明するという検事の職責からもかけ離れている。

 近年、検事の不当な取り調べが相次いで発覚している。

 東京地裁は7月、横浜地検の検事が、逮捕した元弁護士を「ガキ」「お子ちゃま」と呼んで侮辱したなどとして、110万円の賠償を国に命じた。元弁護士は黙秘を貫いていた。憲法が保障する権利を ないがしろにしたと言う他ない。

 いずれのケースも、取り調べが録音録画されていたため、映像を検証して発覚した。カメラがあるのに、検事が威圧的な言動を続けた点に問題の根深さがある。

 検察では、容疑者から自白を得られないと組織内で評価が下がるとされる。こうした文化が重圧となり、強引な取り調べを生んでいるのではないか。検事に罪悪感さえないとすれば深刻な状況だ。

 19年の参院選を巡る河井克行元法相の大規模買収事件では、東京地検特捜部の検事が当時の広島市議を任意で調べた際、不起訴にすると示唆して、罪を認めさせていたことも明らかになった。

 現在、検事の取り調べの録音録画は、容疑者が逮捕された事件の9割超に上るが、任意の取り調べには適用されていない。範囲を拡大することが不可欠だ。

 裁判では、容疑者の自白が重視され、有罪の根拠とされるケースが多かった。自白偏重を許してきた裁判所の責任も重い。

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