惨敗の競泳「組織が今のままでは無理」「コーチが同じ方向見てない」…柔道は「作戦」失敗か
読売新聞 / 2024年8月15日 5時0分
東京~パリ 3年後の決算<下>
パリ五輪日本選手団は、国外開催の夏季五輪で史上最多となる20個の金メダルを獲得した。東京大会から3年を経て競技力向上、世代交代を進めてきた各競技の収穫と課題を検証する。
パリ五輪PT、早々に解散
メダルラッシュの陰で日本の「お家芸」は苦戦した。
メダルなしに終わった1996年のアトランタ大会以来の惨敗を喫したのが競泳だ。メダルは松下知之(東洋大)が男子400メートル個人メドレーで獲得した銀1個のみ。「選手の才能は(どの五輪でも)そんなに変わらない。組織が今のままでは無理という感じ。はっきり言えばリーダーシップの欠如」。今月上旬、松下を指導する平井伯昌コーチが問題点を指摘した。
チームとしての詰めの甘さが明らかだった。今大会のプールは水深2・2メートル。深い方が波が起きにくいとされ、最近の主要な国際大会では3メートルが一般的だが、その事実を強化担当の一人が把握したのは開幕直前。また、一部コーチに渡された身分証は、大会中に会場への入場ができないものだった。日本オリンピック委員会(JOC)が事前に周知した資料には記載があったが、コーチ陣に伝えられたのはパリに入ってから。会場に入れないコーチが困惑するだけでなく、選手から「練習で記録を計ってくれる人がいない」との声も漏れた。
昨年の世界選手権ではリレーの選手起用をきっかけに、コーチや選手の不満が噴出。強化方針の違いから平井コーチはその後の杭州アジア大会の参加を辞退。パリ五輪に向けたプロジェクトチームも五輪を前に早々と解散になった。
東京大会からの3年でヘッドコーチが大会ごとに代わり、長期的な強化方針やチームが進むべき方向が見えにくかったという声もある。あるコーチは「日本代表の中でもコーチ陣は各所属で分かれ、同じ方向を向いていない」と語る。他国の選手が力をつける中、チームの一体感を取り戻さなければ勝負にはならない。「競泳ニッポン」の復権が、そこにかかっている。
柔道、「早期内定」裏目
柔道は東京大会の金メダル9個から3個へと大幅に成績を落とした。
パリ大会に向けて導入された「早期内定」の制度で、多くの選手が昨夏には代表に決まっていた。けがを回避しながら、五輪本番のコンディション作りを優先するためだった。だが、競争がなくなった分、内定選手が無理をしてまで国際大会に出場するケースが減った。
象徴的だったのが女子52キロ級の阿部詩(パーク24)で、実力に反して世界ランキングが上がらず、五輪はシード権なし。階級によっては、代表に選ばれていない選手よりも世界ランキングが低く、一時は出場権が危ぶまれることまであった。
シード権がないため対戦相手の予想が難しく、独自のシステムを構築して行っている研究も成果が出にくい。結果的に早期敗退につながった。金野潤強化委員長は「データを見た上で(早期内定)システムを作ったが、もう一度しっかりと検討し、決定の時期も含めて考えていきたい」と話す。全日本柔道連盟は今秋新たに選ぶ全日本女子の監督に初の女性の起用を検討している。新体制による立て直しは急務となる。(この連載は佐野司、小高広樹、森井智史、大舘司、井上敬雄が担当しました)
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