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エネルギー政策で一定の成果、「デフレからの脱却」は途上…岸田政権の「経済」

読売新聞 / 2024年8月15日 1時40分

 14日に自民党総裁選に出馬しない意向を表明した岸田首相は、原子力発電所の新増設や建て替えの検討加速を表明し、エネルギー政策では一定の成果を上げた。新しいNISA(少額投資非課税制度)の導入で、資産形成の機運醸成にも一役買った。一方、物価高で家計の負担は重いままで、デフレ脱却という最大の経済課題を積み残した。

   ■方針を転換

 岸田首相が原発の新増設や建て替え推進を明確に打ち出したのは2022年8月。原発の再稼働とともに、次世代原発の開発・建設の推進も掲げた。東日本大震災以降、原発への「依存度を可能な限り低減する」としてきた政府の方針を転換した。

 12年に自民党が政権復帰して以降、原発を「重要なベースロード電源」と位置づける一方、安倍、菅の両内閣は新増設や建て替えには踏み込まなかった。22年2月のロシアによるウクライナ侵略で資源価格が上昇したことが、方針転換の契機になった。

 「原則40年、最長60年」としてきた原発の運転期間の見直しにも着手した。23年の通常国会では、停止期間に限って運転延長を認めることを可能にする関連法を成立させ、実質的に60年超の運転に道を開いた。

 ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏は「前政権まで宿題となっていた原発再稼働などで産業政策面の転換を図り、市場や海外で日本が再評価される流れを作ったことは評価されるべきだ」と話す。

 ただ、足元の原発の再稼働は、廃炉を決めていない36基のうち12基にとどまる。特に東日本では1基も再稼働に至らず、電力料金は高止まりしている。

   ■「値上げの秋」

 在任中は、近年にない物価高に見舞われた。

 ロシアのウクライナ侵略に伴う燃料費や輸入コストの上昇を価格に転嫁する動きが加速。22年秋には飲食品メーカーが相次いで商品を値上げし、「値上げの秋」と呼ばれた。

 23年1月には消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)が前年同月比4・2%と41年4か月ぶりとなる高い伸びとなり、家計を直撃した。政府は1月使用分から電気・ガス代への補助を開始し、当初は物価を1%程度押し下げた。

 こうした物価高は、消費の活性化によるものではなく、原材料価格の高騰でもたらされた面が大きい。首相は「デフレからの完全脱却」を目指してきたが、実現には至らなかった。

   ■「資産所得倍増」

 金融市場では、22年に「資産所得倍増」を打ち出したことが好感された。今年1月に始まった新しいNISAの効果もあり、個人の投資への関心が高まった。

 日経平均株価(225種)は就任時の21年10月に2万8000円前後で推移していたが、好調な企業業績も背景に、今年2月には終値で3万9098円をつけ、34年2か月ぶりに最高値を更新。7月には4万2224円の史上最高値をつけた。

 実体経済では、名目国内総生産(GDP)が23年10~12月期に年換算で599兆円に達し、目標の600兆円が目前となった。首相は14日の記者会見で「新しい資本主義のもとで、GDP600兆円を確実なものとしなければいけない」と述べた。

   ■植田氏を起用

 金融政策では、大規模な金融緩和を重視して黒田 東彦 はるひこ・前総裁を起用した安倍晋三・元首相との違いが鮮明になった。岸田首相は23年2月、元東大教授の植田和男氏を日本銀行総裁にあてる人事案を明らかにした。戦後初の学者出身である植田氏の選考に、側近とともに主体的に関与した。

 植田氏は23年4月の就任以降、13年に始まった「量的・質的金融緩和」を段階的に変更し、金融政策の正常化を進めた。24年3月にはマイナス金利政策を解除した。

 しかし、円安・ドル高基調が続いた。岸田内閣発足直後は1ドル=110円台だったが、今年6月には160円台まで下落。日銀は7月に追加利上げに踏み切り、円相場は円高・ドル安に急転換した。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は「想定される自民党総裁の候補者の多くは、金融正常化が必要との認識を持っている。金融引き締めの方向性に、真っ向から反対される可能性は低いだろう」とみる。

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