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衆院選への懸念、岸田首相の「決断」に大きく影響…情勢厳しく「辞めることでしか党は守れない」

読売新聞 / 2024年8月15日 0時0分

 岸田首相が自民党総裁選への不出馬を決めたのは、自身に国民の共感が失われつつあり、次期衆院選には「新たな党の顔」で臨むべきだと判断したためだ。お盆明けから総裁選の動きが活発化することを見据え、「政治とカネ」の問題で責任を取る姿勢を示し、「透明で開かれた総裁選」への道筋をつける狙いもあった。

意地

 「政治家としてやりたかったこと、やるべきことを整理し、方向性だけは総裁選から撤退するにあたってもしっかりと示していく。政治家の意地みたいなものはあった」

 首相は14日の記者会見で、不出馬表明までの思いをこう明かし、「自民が変わることを示す、最も分かりやすい一歩は私が身を引くことだ」とも強調した。

 この1か月半、首相は活発に地方訪問を繰り返すなどして政策の打ち出しを重ねてきた。6月21日の通常国会の事実上閉会を受けた記者会見では、秋に経済対策をとりまとめる考えを表明した。

 党内には、こうした動きに関し、「総裁選に向けた環境整備を進めている」と見る向きが多かった。

 実際、11月の米大統領選や緊迫する台湾情勢を前に、首相自身も「私に代わって外交や経済をきちんとできる人がいるのか」と漏らし、続投の可能性を探っていた。

 ただ、政治資金規正法違反事件による逆風で内閣支持率の低迷からは脱することができず、「国民の共感が得られないままでは政策も外交も実行できない」との思いも持ち、けじめをつけなければならないとの葛藤にも苦しんでいた。

当日朝に伝達

 首相は13日夜、東京都内のホテルで、側近の木原誠二幹事長代理とひそかに面会し、不出馬表明に向けた記者会見の準備に入った。党幹部らに電話で不出馬の意向を伝え始めたのは、14日朝に入ってからだった。

 首相は「自分が辞めることでしか党は守れない」「派閥がなくなってから最初の総裁選だ。派閥による選挙とならないよう、気をつけなければいけない」――などと説明した。

 電話を受けた党三役の一人は「首相は吹っ切れた感じだった」と語った。

 総裁選日程を決める党の選挙管理委員会の会合は20日に迫っており、来週に入れば、総裁選の出馬表明が本格化することが予想され、水面下では党重鎮や派閥を軸とした動きも生じていたことを首相は危惧していた。

 党幹部は「こんな総裁選をしていたら、国民から見放されてしまうとの思いが最後に首相の背中を押した」と振り返った。

選挙に危機感

 衆院選への懸念も首相の判断に大きく影響した。

 現時点で衆院解散・総選挙に踏み切れば、自民、公明両党を合わせても過半数を確保できず、政権転落しかねない――。夏に入り、党がひそかに行った情勢調査ではこうした厳しい見通しが示され、首相は「総裁選で勝っても、自民党が衆院選で負ければ意味がない。仮に政権交代が起きれば、日本が沈没する」と周囲に語った。

 首相を支える岸田派からは、「総裁選に勝った上で、衆院解散は任期満了ギリギリまで先延ばしにすればいい」との声も出ていたが、党内では、事件で大量の処分者を出した安倍派だけでなく、主流派の麻生、茂木両派からも首相交代を求める声は拡大していた。首相周辺は「党一丸となって衆院選に臨む展望が首相にはどうしても描けなかった」と指摘した。

 自らの退陣と引き換えに、党再生へとつなげることができるか――。その成否は、9月の総裁選とその後の次期衆院選で明らかになる。

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