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時給上がらず「暮らしが良くなった実感ない」、拉致問題「水面下の交渉がリセット」…退陣表明の岸田首相にため息や落胆の声

読売新聞 / 2024年8月15日 1時8分

岸田首相が自民党総裁選への不出馬を決めたニュースを流す街頭のモニター(14日、東京都千代田区で)=野口哲司撮影

 岸田首相が14日、自民党総裁選への不出馬を突然表明した。「聞く力」を売りに就任してから約2年10か月。この日の記者会見では、賃上げや投資促進などで「大きな成果を上げた」と強調したが、国民の実感は伴わず、根深い政治不信を拭えぬままの退場となる。

  ■物価だけ上がった

 「最低賃金が上がっただけで、自分の時給は全然上がっていない。暮らしが良くなった実感は全くない」。東京都港区のJR新橋駅前に来ていた江戸川区のパート従業員(48)はそうため息をついた。

 勤務先の運送会社では今春から残業が規制された。生活が苦しくなり、週1回、単発バイトの紹介アプリを使ってスーパーで品だしの副業も始めたという。「岸田さんの経済対策は効果がなく、ただ物価だけが上がった印象だ」と話した。

 「経済の再生」を最大の使命と掲げた岸田首相。今年の春闘では33年ぶりの高い賃上げ水準が実現した。

 だが、大田区の約700の町工場が加盟する「大田工業連合会」の広瀬安宏会長(64)は「原材料費やエネルギー費の高騰に大きな影響を受ける町工場は、内部留保や借金に頼って不健全な賃上げを行っているのが現状だ」と指摘。「岸田首相には町工場が恩恵を受けられるまで、経済政策を推し進めてほしかった」と語った。

    ■拉致被害者家族

 岸田首相は、北朝鮮による拉致問題への対応を「首相直轄のハイレベル」で進めると強調してきた。関係者からは落胆の声が漏れた。

 拉致被害者家族会の代表で、横田めぐみさん(拉致当時13歳)の弟・拓也さん(55)は、「水面下の交渉がリセットとなることは、残された拉致被害者がさらにつらい時間を過ごしていくことになり、残念だ」とのコメントを出した。

 有本恵子さん(同23歳)の父・明弘さん(96)は「リーダーシップを十分に発揮できなかった印象だ」と述べ、拉致被害者の曽我ひとみさん(65)は「被害者の全員帰国が果たされていないことは残念でなりません」「時間がありません」などとする談話を発表した。

   ■もっと支援を

 就任翌年の2022年7月には、安倍晋三・元首相が街頭演説中に銃撃され死亡する事件が発生した。起訴された被告の母親が信仰する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金問題がクローズアップされ、23年末には被害者救済に向けた「財産管理特例法」が成立した。

 教団に献金した約1億円の返金を求めている関西地方の80歳代の元信者女性は「教団は返金に応じるかも分からず、岸田首相の指揮の下、もっと国に支援し続けてほしかった」と話した。

衆院補選全敗、都議補選2勝6敗「逃げてしまった」

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件の「逆風」を受けながら地元で選挙を戦ってきた関係者からは、首相の総裁選不出馬に驚きや諦めの声が漏れた。

 安倍、二階両派の議員ら39人に処分を決定したのは今年4月4日だったが、首相は党総裁としての自身に処分は出さなかった。それ以降、自民は同月下旬の衆院補欠選挙で不戦敗を含む3戦全敗を喫し、7月の都議補選も2勝6敗に終わった。

 「突然のことで、驚くしかない」。衆院補選で不戦敗だった東京15区の自民関係者は、党内処分から4か月も経過した時点での「退陣表明」にそう漏らし、「詳しい説明を早く聞きたい」と話した。

 自民は衆院補選で唯一、「保守王国」と呼ばれた島根1区に公認候補を擁立し、首相も2度応援演説に駆けつけたが、野党候補の前に敗北した。ある自民県議は「首相の不出馬で逆風が和らげばいいが、もう政党名で勝てる時代ではないかもしれない」とこぼした。

 一方、都議補選で落選した候補の陣営関係者は、「事件の処分が中途半端だった」と語り、「総裁選で白黒つけることが党のイメージを良くさせるはずなのに、ここまで長引かせ、逃げてしまった」と批判した。

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