岸田首相退陣へ 総裁選びを自民再生の契機に
読売新聞 / 2024年8月15日 5時0分
◆信頼回復へ政策や見識競い合え◆
たとえ総裁選で再選できたとしても、政治不信を
ここで進退にけじめをつけ、新しい体制を構築して国政選挙に臨むべきだ、と判断したのだろう。
内外の課題は山積している。政治の安定は欠かせない。岸田首相の退陣を契機に、自民党は、志ある人材が政策や見識を競い合い、信頼回復を図らねばならない。
首相が、9月に行われる自民党総裁選に立候補しない意向を表明した。9月末の総裁任期の満了に伴い、首相を辞任する。
懸案に道筋をつけた
首相は記者会見で「自民党が変わることを示す、最も分かりやすい最初の一歩は、私が身を引くことだ」と述べた。
衆院議員の任期は来年10月30日までで、総選挙は年内にも行われる可能性がある。来年夏には参院選も予定されている。
「政治とカネ」を巡る問題で内閣、自民党ともに支持率は低迷が続いている。首相としては、総裁再選後も支持率が持ち直さなければ国政選挙で自民党が政権を失いかねない、と考えたのではないか。
首相は周辺に対し、「いつまでも『ケジメをつけろ』と言われ続けるのは不本意だ」という心境を漏らしている。
2021年10月に発足した岸田内閣が取り組んだ政策は、いずれも時宜に
厳しさを増した安全保障環境に対処するため、23年度からの5年間の防衛費をそれまでの1・5倍超に増やすことを決めた。
歴代内閣が「政策判断として持たない」としてきた敵基地攻撃能力についても、保有に
外交では、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)問題などで悪化していた日韓関係を改善させた。尹錫悦韓国大統領と信頼関係を築いたことが奏功した。
一方、内政に関しては、少子化対策として児童手当や育児休業給付の拡充を柱とする法改正を実現させた。対策の効果は今後見極めねばならないが、国難に立ち向かおうという決意に異論はない。
昨年夏には、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に踏み切った。
様々な懸案に道筋をつけたことは評価すべきだろう。
官邸と党に不協和音
にもかかわらず、政権運営は行き詰まった。その一因は、自民党の不祥事である。
派閥の政治資金パーティーを巡り、収入の一部を裏金化していたとして、安倍派と二階派の会計責任者らが政治資金規正法違反で立件された。岸田派の元会計責任者も同様に罪に問われた。
党執行部は安倍派を中心に39人を処分したが、岸田派は処分対象としなかった。党内に首相への不満が広がったのも無理はない。
首相はこの事件を巡り、他派閥の幹部らに相談せず、唐突に岸田派の解散を表明した。
首相が「サプライズ」効果を狙い、党と相談せずに様々な決定を下したことは、混乱を招いた。白けたムードが漂い、首相を支えようという議員も減った。
官邸主導の体制が確立し、首相は「自分が決めれば周囲が従う」と思い込んでいたのではないか。周到な根回しや調整を怠れば、物事は前進しまい。
政治不信の解消を急げ
自民党総裁選の日程は今月20日に決まる。国政選挙を意識し、党内では、「選挙の顔」になりそうな政治家を新総裁に担ごうというムードが漂っている。
だが、自民党総裁選は、国の舵取りを担うリーダーを決める選挙だ。高い識見や明確な国家観、政策を前進させるための調整能力を持っている人物がふさわしい。選ぶ側の国会議員や党員は、そうした認識を持つ必要がある。
今回は、主な派閥が解散を表明してから初の総裁選となるが、実際に派閥を解消したのは森山派だけで、最近は、派閥単位で議員が集まることも多い。派閥解散が形骸化しているかどうか、総裁選を通じて明らかになるだろう。
政治への不信感は自民党に対してだけでなく、既成政党全体に向けられている。
読売新聞の先月の世論調査では、無党派層が54%に上り、民主党政権時代の12年8月(55%)以来の水準となった。
自民党が信頼を失う一方、野党も自民党に対抗し得る政策を提示できず、期待を集められていないということだろう。国民の政治離れを食い止めることが急務だ。
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