1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「ランちゃん」から「伊藤蘭」へ、ソロ活動5年「キャンディーズは私の体の一部」…再結成の可能性は?

読売新聞 / 2024年8月24日 11時0分

元キャンディーズで歌手の伊藤蘭さん=富永健太郎撮影

 キャンディーズの元メンバー、伊藤蘭が2019年にソロ歌手として再デビューして5年を迎えた。今年も新曲を発表し、全国9都市を巡るツアーに出るなどさらに勢いは加速している。彼女はなぜ、40年以上の沈黙を破って復帰し、「キャンディーズ」の看板を一人で背負い続けるのか。歌への思い、偶像化した「ランちゃん」との向き合い方などについて尋ねた。(読売新聞文化部 鶴田裕介)

「フリはやるの?」からのスタート

 ――アルバム制作、ツアーと精力的な5年間でした。手応えは。

伊藤蘭(以下、伊藤) やり始めるや否やぐらいの時に、皆さんと同じようにコロナ禍で立ち止まったり、(ライブが)中止になったりも経験しつつ、逆にその期間、アルバム制作にじっくり時間をかけられたこともありました。どの年も充実した創作活動ができたことがありがたいな、と思います。去年は(1973年のキャンディーズのデビューから)50周年。こんな私が、こういうふうに今、活動できていることが不思議ですね。皆さん一人一人の思いのエネルギーに動かされている感じでしょうか。

 ――キャンディーズ解散が78年、ソロデビューが2019年。歌手としてかなりのブランクがありました。

伊藤 もう、ブランクどころじゃないですよ。受け入れてもらえるかどうかもわからないし、キャンディーズの歌もどういう顔して歌っていいかわからない。フリはやるの? やった方がいいの? 半分ぐらいでいいの? というところからのスタートでした。公演での皆さんの反応だったり、声援だったりが背中を押してくれた感じですね。

「オーガニック」「キラキラ」「その両方」

 ――5年で発表した3枚のアルバムはキャンディーズを思わせる曲もあれば、同時代のポップスを歌うという気概も感じられます。どのような音楽性を目指したのですか。

伊藤 私自身の音楽的な好みがありますよね。一方で「キャンディーズで歌っていたあの人が60代を迎えて、どんな曲を歌うんだろう」というところから、ファーストアルバム(『My Bouquet』19年発売)のために集まってきた曲が、オーガニックな(電子楽器ではない風合いの)曲ばかりだったんです。人は60代という年代の女性に落ち着きを求めるし、私もそんな一面は好きですけれど、それだけじゃない一面もある。とりあえずファーストは、そんな楽曲の中からチョイスして、あれはあれですてきなアルバムになったと思うんです。

 でも、2枚目(『Beside you』21年発売)はちょっとエッジの利いた、ファーストが朝の雰囲気だったら、2枚目は夜ステージでライトがキラキラ輝いているような、そんなイメージにしたくてできたアルバムです。

 3枚目(『LEVEL9.9』、23年発売)は、その両方をミックスして、私の好きな音楽性や、こういう曲を歌いたいという思いをくみ取ってもらいました。段階を踏んで今の私に近づいてきた感じです。どれもが大事なステップですね。

新曲は「宇宙に出るくらいの解放感」

 ――普段はどんな音楽を聴きますか。

伊藤 色々聴きますね。ノラ・ジョーンズも好きで一時、ものすごく聴いていて、今でもいいなと思う部分があります。ロック系も好きですし、フリートウッド・マックも好き。デュア・リパも聴きます。かわいいなと思って聴いています。山本潤子さんも大好きです。

 ――8月21日に新曲「風にのって~Over the Moon」を発表しました。昨年からサブスクなどでロングヒットを続ける「Shibuya Sta. Drivin’ Night」と対をなす、前向きな曲と受け止めました。どんな思いを込めた曲なのですか。

伊藤 (両曲ともシンガー・ソングライターの)安部純さんが作ってくださいました。「Shibuya Sta. Drivin’ Night」は「シティ・ポップ」というジャンルに入るのかもしれないですけれども、スタッフもファンの方々も「好き」とおっしゃってくださる方が多かったんです。私自身、新しい世界観というか、エフェクト(声にかける特殊効果)ありの歌という部分も含めて新鮮だったんですよね。今度は安部さんには「歌詞がダイレクトに伝わって、皆さんが幸せな気持ちになれるような、前を向いていけるような楽曲を、今度は渋谷を越えて宇宙に出るぐらいの解放感があるような曲ができたらいいな」とお願いして、できあがりました。

全国9都市ツアー「月を越えて」

 ――8月25日の大阪から、全国9都市を巡るツアーに出ます。どんなツアーにしたいですか。

伊藤 ツアーのタイトルは「伊藤 蘭 ~Over the Moon~ コンサートツアー 2024―2025」。「Over the Moon」は英語で「月を越えてしまうぐらい楽しい気持ち」だったり、うれしいと表現したりする時に使うフレーズなんです。皆さんに楽しんでいただける瞬間を一緒に共有できたらという思いで(23年に出した)エッセー本のタイトルをそのままツアーにも持ってきました。新曲「風にのって~Over the Moon」でも使っています。

 ――23年までは、ツアー名に「Candies」と入っていましたが、今回はなくなりました。キャンディーズの曲を抑えめにしてソロの曲中心でいこうという意思表示でしょうか。

伊藤 それはないですね。当たり前のようにキャンディーズは聴いていただけるものとして受け止めてもらえるんじゃないかなということで、あえて入れなかったというか、自然な形でそうなったんです。もう私の体の一部でもあるし、細胞の一つになっているので。歌はもちろんいい曲が多いし、聴いていただきたいことに変わりはない。引き続き継承して歌いたい気持ちはあるので、あえて入れなかったんです。当たり前のように「歌いますよ」とわかっていただける頃かなと思いました。

 (ソロ活動開始後)初めての時は正直言いまして、これからどうするんだろうと、キャンディーズの曲を歌う時もちょっと戸惑いがありましたし、多分ファンの方々も「1回やれば蘭さん、気が済むんじゃないかしら」みたいに思っていた方も多かったと思うんですよね。年齢的なこともそうだし、そんなに長く続かないんじゃないかなと思った方もいたのでしょうが、やり始めたら手ごたえもありましたし、私自身が楽しくなってきたこともあるし。キャンディーズの楽曲も生き生きと蘇らせることができて、生で楽しんでいただける機会があるならば、伝えていきたいと思いました。

初めは気恥ずかしい感じ

 ――キャンディーズの曲ばかりではなく、同じ熱量でソロ曲も応援しなきゃ、と気にしているファンの方もいると思います。でも伊藤さんとしては、キャンディーズの曲で盛り上がってくれるのもうれしいことなのですか。

伊藤 うれしいですね。うん。もちろん初めはね、なんとなく気恥ずかしい感じもありましたけれど。でも、気持ちももう、当時の感じに戻ってしまいますし。

 ――キャンディーズの存在があまりに大きいがゆえに、ソロでもそのイメージを求められ、比較されることも多かったと思います。キャンディーズの「ランちゃん」とソロ歌手「伊藤蘭」のバランスはどう取っていますか。

伊藤 当時は3人のコーラスがあって、ハーモニーがあってのキャンディーズの楽曲の強みがあったと思います。それをひとりで背負うのはすごく心もとないですし、寂しいんです。だから、そこはコーラスの方に助けていただいてできることです。あとは聴いている人たちの思いで埋めていただいているのだと思います。なんだか余計、2人の不在を感じさせてしまうのかな、と思ったりもするんですけどね。

周年だから出来たこと

 ――スー(田中好子)さんはもういらっしゃらないですものね(※田中さんは2011年、乳がんのため死去)。

伊藤 そうなんですよね。さみしいこともあるんですけど。やっぱりいい歌が多いので、ただ眠らせておくのももったいないなと思って。

 ――去年の日比谷野音のコンサートにはミキ(藤村美樹)さんも見に来ていたそうですね。

伊藤 そうですね、ほとんど毎回(見に来てくれます)。

 ――ミキさんとキャンディーズを再結成したり、2人で新曲を出したりする可能性はありますか。

伊藤 うーん、そうですね。ミキさんはミキさんなりの生活がありますし、多分、静かに暮らしたいという意向があると思うので、それは大事にして、侵してはならない領域で。(23年、キャンディーズのデビュー50周年に合わせて)対談をしたり、色々協力してもらったりしたことは、できる範囲でありましたが、それは周年だからこそ、できたことでした。

 ――今後の展望を教えてください。

伊藤 せっかく3枚のいいアルバムを持つことができたので、来年ぐらいまではそれらの楽曲を磨いて、生で皆さんに聴いていただくことも大事だなと。それこそ3枚の中にも、歌う機会は少なかったけれども、いい曲もあるし。そんな作業もきちんと忘れずにやっていきたいなと思います。

コンサートツアー情報

 8月下旬から、大阪、仙台、埼玉、名古屋、福岡、熊本、京都、神戸、東京と全国9都市を巡る全国ツアーに出る。9月19日・さいたま市大宮区のソニックシティ、2025年1月25日、東京・有明の東京ガーデンシアター。詳細は専用サイト(https://www.diskgarage.com/feature/ito-ran/2024-2025/)で。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください