鶴岡東の億田知輝捕手「うちには絶対的なエースがいる」と迷いなくリード…早実に惜敗

早稲田実に敗れ、アルプス席にあいさつに向かう鶴岡東の選手たち

　第１０６回全国高校野球選手権大会第９日の１５日、鶴岡東（山形）は２回戦で延長タイブレイクの末、早稲田実（西東京）に０―１で惜敗し、２０１９年以来５年ぶりの３回戦進出はならなかった。エースの桜井 椿稀 （つばき）投手が快投を演じ、全国制覇の経験を持つ伝統校を相手に一歩も引かなかった。わずかに及ばなかったが、代表校にふさわしい戦いぶりだった。

　息詰まる投手戦になっても、億田知輝捕手は落ち着いていた。「うちには絶対的なエースがいる」。迷いのないリードで桜井投手の良さを引き出し、強豪を最後まで追い込んだ。

　真骨頂は七回一死二、三塁のピンチを迎えた場面だ。低めに変化球を集めてスクイズを阻むと、次打者には追い込んでから外角のスライダーを要求。バットは空を切った。「自分の要求よりいい球がきて興奮した」と振り返った。

　バッテリーを組んだのは、新チームが始動した昨秋。桜井投手から「リードは任せる」と言われ、常に対戦相手の情報を頭にたたき込んできた。早稲田実は各打者のスイングが鋭く、初球から振ってくると分析。変化球で打ち気をそらすと、試合前から決めていた。最後は甘く入ったスライダーを打たれたが、「桜井は自分のリードを信じてくれ、自分は桜井を信じたから悔いはない」と言い切った。

　この夏で野球はやめるという。桜井投手には試合後、「もっと高いところを目指せよ」と背中を押した。進む道は違えど、ともに歩んだ日々を忘れない。（木村彩乃）