南海トラフ臨時情報、対象住民83%が見聞き…昨年調査では「知らない」7割
読売新聞 / 2024年8月15日 23時13分
南海トラフ地震の臨時情報(巨大地震注意)の呼びかけが15日、終了した。2019年の運用開始後、初の発表となったが、この1週間で実際に防災行動をとった人は少なかったとの調査結果もある。対策の強化にどう結びつけていくかが課題となる。
防災行動とった人は少ない
「異常な活動は観測されなかった」。気象庁は15日午後6時から記者会見し、想定震源域西端の日向灘で8日起きたマグニチュード(M)7・1の地震以降、南海トラフ地震につながるような異常はなかったと説明した。
だが、懸念がなくなったわけではない。同庁によると、世界で起きたM7以上の地震1437回のうち、1週間~14日後に震源から50キロ・メートル内で起きたM8級以上の後発地震は2回確認されている。同庁は「南海トラフ地震は切迫性が高い状態だ。引き続き地震への備えをしてほしい」と訴えた。
臨時情報は、認知度の低さが課題だった。内閣府が昨年、対象地域で行った調査では、臨時情報を「知らない」「詳しく知らない」などと回答した人は7割に上った。
今回の発表を受け、東京大総合防災情報研究センターが発表翌日から3日間、対象地域の住民5600人にインターネットで調査した結果、見聞きした人は83%に上った。ただ、政府の呼びかけを受け、「家族との連絡方法を確認した」は9%、「家具の転倒防止の確認」は8%にとどまった。
発信内容が今後の課題
同センターの安本真也特任助教は「何をしたらよいか分からない人が多く、情報の発信内容が今後の課題だ」と指摘する。
南海トラフ地震は、国難級の被害が想定されており、対策は待ったなしだ。
南海トラフ沿いでは、100~150年周期で大規模地震が繰り返し起きている。前回の1946年の昭和南海地震(M8・0)、44年の昭和東南海地震(M7・9)から約80年が経過。少子高齢化も見据えた備えの強化が急がれる。
政府は今年度、約10年前にまとめた南海トラフ地震対策の被害想定や基本計画の見直しを進めており、今回の臨時情報や1月の能登半島地震の課題も検証し、反映させる方針だ。
臨時情報の制度設計に携わった福和伸夫・名古屋大名誉教授は「今回はある種の壮大な社会実験となったが、南海トラフ地震は国の半分が被災する巨大災害であり、本気で対策し、被害軽減につなげていく必要がある。耐震化や高台移転、企業の業務継続計画策定を進めていくことが重要だ」と訴える。
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