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終戦の日 危機の時代に平和をどう守る

読売新聞 / 2024年8月16日 5時0分

◆外交努力と抑止力向上が必要だ◆

 ロシアのウクライナ侵略やパレスチナ情勢の悪化など、世界情勢の混迷が深まっている。戦後の国際秩序が崩れた危機の時代に、平和をどう守っていくかが問われている。

 79回目となった終戦の日、政府主催の全国戦没者追悼式が、東京・日本武道館で開かれた。

 天皇陛下はお言葉で、「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願う」と述べられた。

 戦後の日本は先の大戦の苦い教訓を踏まえ、憲法の平和主義と、主権と領土の尊重などをうたった国連憲章を忠実に守り、国際社会の安定に力を尽くしてきた。

 国際秩序の回復が急務

 しかし、現在の世界はかつてない危機の渦中にある。

 2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵略は、終息の糸口すら見えない。力ずくで他国の領土を奪おうとするプーチン大統領の暴挙は、法の支配に基づく国際秩序を根底から破壊した。

 ロシアへの対応を巡り、世界の分断は深まっている。

 中東では、パレスチナ自治区ガザへのイスラエルの攻撃が激しさを増している。イスラム主義組織ハマスの越境攻撃が端緒となり、女性や子供を含む数万人の民間人が犠牲となっている。

 ウクライナやガザの現状に、心を痛めている人も多いだろう。侵略や非人道的行為を止めるには、国際社会が結束し、圧力を強めることが肝要だ。

 79年前の終戦時、東京をはじめ多くの都市が焼け野原となった日本が今、平和と繁栄を享受できているのは、一度も他国と戦火を交えることがなかったからだ。

 戦後の日本は、日米同盟を基軸に、自由主義社会の一員として歩んできた。戦後の国際情勢や国力を踏まえた現実的選択が、79年間の平和を支えてきたと言える。

 だが、日本を取り巻く安全保障環境は大きく変化した。現実を直視した対応が大切だ。

 世界各地で戦争の悲劇が続く今だからこそ、平和の尊さを日本が訴え、国際秩序の再構築に貢献する決意を新たにしたい。

 争いのない世界は、理想を掲げるだけでは実現できない。戦争を起こさせないためには、正確な情勢認識と自国を防衛する積極的な努力が欠かせない。

 防衛力の整備を着実に

 中国は、尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返し、台湾周辺では大規模な軍事演習を行っている。台湾有事は日本の安全に直結する。

 北朝鮮は核・ミサイル開発を加速させ、ロシアは北方領土の不法占拠を既成事実化している。

 今年の防衛白書は、日本が直面する安全保障環境を「戦後最も厳しく複雑」と明記した。ロシアのウクライナ侵略と同様の事態が東アジアで発生する可能性は排除されない、とも指摘した。

 ウクライナでは、ロシアが占領した地域で、行政組織や法制度の「ロシア化」が進んでいる。北方領土の例を挙げるまでもなく、一度奪われた領土を取り戻すことは容易ではない。

 領土と国民を守るには、防衛力が手薄な軍事的空白を作らぬよう自衛隊の能力と装備を向上させ、米国や友好国と連携して抑止力を高めねばならない。

 一部には、自衛隊の能力を向上させ、日米同盟を強化すると、他国との緊張を高め、かえって日本が周辺の有事に巻き込まれる、という「巻き込まれ論」に基づいた批判がある。

 しかし、これは日本が無防備でいれば他国から脅威を受けることはない、という楽観論を前提にした考え方に立っている。

 ロシアのウクライナ侵略は、こうした考え方が非現実的であることを示した。必要な防衛力を、着実に整備することは不可欠だ。

 抑止力を高める手段は、軍事面に限らない。外交努力も重要だ。日本は、これまで国際秩序の受益者の立場だった。これからは、新たな平和秩序の構築を主導する役割を果たさねばならない。

 非軍事分野でも貢献を

 日本は政府開発援助を通じ、新興国や途上国と良好な関係を築いてきた。こうした財産を生かし、働きかけを強めることで国際秩序の回復に貢献したい。

 これまで培ってきた中東との友好関係も生かし、ガザの人道状況の改善に役割を果たすべきだ。

 日本は紛争や災害などが発生した地域で、医療や食料の支援にも取り組んできた。こうした能力を世界に提供し続けることも、日本への信頼を高め、平和を守ることにつながるはずだ。

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