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激戦地への遺族会の慰霊訪問、来年度で終了…高齢化で参加者減り継続難しく

読売新聞 / 2024年8月16日 15時0分

 第2次世界大戦で肉親をなくした遺族らが、激戦地を訪ねて戦没者を弔う「慰霊友好親善事業」が、戦後80年の来年度を最後に終了する。主催する日本遺族会(東京)が明らかにした。遺族の傷を癒やし、戦争の悲惨さを後世に伝える役割を担ってきたが、高齢化で継続が難しくなった。

 事業は1991年に始まった。中国やフィリピン、太平洋諸島などのほか、船上で行う「洋上慰霊」を含め、昨年度までの計426回の訪問に、延べ1万6149人の遺族が参加した。

 国主催の海外慰霊事業と異なり、「戦争に巻き込まれた人と悲しみを分かち合い、二度と戦争が起きない社会をつくりたい」と、現地の住民と積極的に交流することが特徴だった。

 学校や病院を訪問し、学用品や車いすを寄付してきた。97年にはミャンマーの住民から「雨が降ると、老朽化した学校が水浸しになり、蚊が大量発生してマラリアが流行する」と聞き、寄付金を集めて3校の小学校の新設につなげた。

 岡山県倉敷市の藤原信子さん(80)は、94年に事業で父が戦死したミャンマーを初めて訪ねて以来、個人も含めて計20回ほど訪れた。寄付金で新設された小学校を訪問した際、児童が日本語で「ふるさと」を合唱してくれ、感激したという。

 藤原さんは「戦争が行われた悲しい場所だけど、父のつないでくれた縁が、子どもたちの明るい未来へとつながり、うれしかった」と振り返る。

 ただ、遺族の高齢化とともに、戦地での慰霊は難しくなってきた。2005年度に911人だった参加者は徐々に減少。20、21年度にコロナ禍で活動を中止した影響もあり、昨年度は248人まで減っていた。

 来年度は戦後80年の節目にあたることもあり、事業の終了を決めた。最後はフィリピンでの活動や洋上慰霊を予定している。

 日本遺族会会長を務める水落敏栄・元参院議員(81)は「遺族の願いである恒久平和を実現していくため、今後も何ができるか検討していきたい」とコメントした。遺骨の収集事業や語り部活動に注力していく。

 国主催の海外慰霊事業は今後も続けられる。

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