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「新しい普通科」高校、各地に…数学と国語を組み合わせ授業・地域の特色や課題探究

読売新聞 / 2024年8月17日 12時37分

 「新しい普通科」高校が登場している。画一的とも言われる教育から脱し、教科横断型や地域の課題解決など独自のカリキュラムを取り入れた新たな学科を設ける動きが出てきた。少子化のなかで個性を打ち出し、存在感を高める狙いがある。(伊藤甲治郎)

 7月上旬、北九州市の福岡県立八幡高校1年のクラス。数学と国語の2教科を組み合わせた授業が行われ、数学科の藤本宏樹教諭(35)と国語科の平田陽子教諭(47)が代わる代わる教壇に立った。

 この日の授業では、五つの香りをかぎ分け、52通りある組み合わせの中からどの組み合わせかを当てる貴族の遊び「 源氏香 げんじこう」を取り上げた。平田教諭は、源氏物語の登場人物や、香りと人を結びつけていた当時の文化を説明。藤本教諭は組み合わせについて数学的に考察させた。

 今年度、八幡高は普通科から、文系と理系の枠を超えて学ぶ「文理共創科」に衣替えした。一般的な教科の学習に加え、教科横断型の授業を展開する。

 1年の男子生徒(15)は「教科を組み合わせた授業は、新しい見方に気付くことができて面白い」と感想を話した。広浜一郎・指導教諭(51)は「横断型の授業を通じ、ものごとを多角的に捉える力を養い、複雑な現代社会の課題解決に役立ててほしい」と語った。

 地域の資源を生かしたコースを設けた高校もある。

 和歌山県串本町の県立串本古座高校は今年度、普通科を「未来創造学科」に改編した。国内初の民間ロケット発射場が町内にある地域の特色を生かし、「宇宙探究コース」などを設けた。宇宙航空研究開発機構( JAXA ジャクサ)で勤務経験のある教員らが指導にあたり、宇宙航空工学や宇宙ビジネスといった授業を受けられる。

 東日本大震災で被災した岩手県大槌町にある県立大槌高校では今年度、「地域探究科」を始めた。大槌町の課題を考え、探究活動をするのが特徴だ。

 新たな学科の設置が相次ぐ背景には、少子化により公立高校の再編や統廃合が加速していることがある。

 文部科学省によると、国公私立の高校は、ピークだった1988年度の5512校から、2023年度には4791校へと減った。

 高知県土佐清水市の県立清水高校は来年度、普通科から教科横断型の「未来共創科」に切り替わる。同高では、過去30年間で生徒数が7分の1程度までに減り、地元の中学からの進学者も半数程度にとどまっていた。

 同高では、幕末に日米交流の橋渡し役となったジョン万次郎の生誕地であることを生かし、グローバル人材の育成を目指し、海外の都市や学校と交流する。新校舎も建設中で、田中修一校長(56)は「ここでしか学べない教育を展開し、多くの生徒に選ばれる高校にしていきたい」と意気込んだ。

22年度に開始、29校設置

 文部科学省は、大学進学を重視した画一的な教育から、生徒の興味や関心を広げる学びへの転換を目指し、普通科高校の改革を進めてきた。2021年に高校設置基準を改正し、22年度から新たな学科を設置できるようにした。

 新たな学科は、文理融合の「学際領域学科」、地元の課題解決を図る「地域社会学科」、デジタル教育などに力を入れる「その他普通科」の3タイプだ。

 文科省によると、今年度までに新たな学科を設置した高校は全国で少なくとも29校に上る。26年度までにさらに18校増える見通しだ。

 ただ、新学科の開設には課題もある。新しい学科を導入した高校では、受験生や保護者から「大学進学に対応した学習ができるのか」といった不安の声も聞かれるという。また、既存のカリキュラムではなく、学校が独自に授業計画を作ったり、教員を配置を考えたりする必要があるため、設置のハードルは高い。

 文科省の高校担当の橋田裕・参事官は「改革に取り組む高校に必要な支援をするほか、先行事例の収集・周知や高校間の交流促進を図り、ノウハウを共有できるようにしていきたい」と話している。

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