1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

亡き兄の本4000冊で「街の図書館」…駄菓子屋だった実家を改装、再び憩いの場に

読売新聞 / 2024年8月19日 0時3分

永田文庫の館長の永田友子さん(左)と夫の政幸さん(右手前)と友人の杉浦とみ子さん(永田文庫で)

 京都市上京区の一角に約4000冊の文学書などをそろえた「永田文庫」は、2020年に77歳で亡くなった永田政俊さん=写真=の蔵書を読んでもらうため、弟夫婦が開設した私設図書館だ。亡き母の営んでいた駄菓子屋を改装し、再び地域の人たちが集う場に。オープンから3年、「街の図書館」として親しまれている。(向野晋)

 館長は、永田友子さん(78)。政俊さんの弟の政幸さん(79)の妻だ。政俊さんを「おにいさん」と呼び、「若い頃から常に片手に本を持っていた」と振り返る。

 政俊さんは京都府立山城高から日本大に進学した。京都の出版社に勤めた後、文学イベントの企画などを経て、1979年にビデオ制作会社を設立。東京に支店を構えるなど軌道に乗せた後、後進に道を譲った。

 闘病の末、肝臓がんで亡くなった兄・政俊さんの一軒家を訪ねた政幸さんは、和室の2部屋が本で埋まっているのを見て驚く。「処分するにも金がかかるのであれば、残す方向で金を使おうと。兄貴の供養にもなると思った」と振り返る。

 かつて駄菓子屋だった実家を、図書館として改装することにした。玄関横の空きスペースに書棚を置き、蔵書を兄の家から運んだ。

 2021年5月にオープンした。「物書きを目指していた」とあって、文学、哲学、旅行記、推理小説などジャンルは幅広い。中でも多いのは太宰治の作品や解説書だ。「人間失格」の初版本を借りに訪れた会社役員、杉浦とみ子さん(75)(右京区)は「政俊さんから生前、太宰を読むように勧められましてね」と故人をしのぶ。

 館長の友子さんは「ほとんどが近所にお住まいの常連さん。こんなに楽しんでもらって、天国のおにいさんも喜んでくれているでしょう」と話す。ノートに名前を書くと誰でも借りられるため、知人以外の人もうれしそうに本を借りていくという。

 永田文庫は「御前通上ノ下立売上ル仲之町299」(075・461・8312)。友子さんがデイサービスセンターに通うこともあり、開館は木、土、日のみ。午前9時から午後5時まで。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください