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「錐体ジストロフィー」で視力低下、十種競技からパラ陸上へ…パリで「僕が一番」視界に

読売新聞 / 2024年8月21日 13時41分

5月の陸上世界選手権の男子400メートルで銀メダルを獲得した福永凌太=古厩正樹撮影

[エース出陣 パラ編]<3>陸上 福永凌太 25(日体大院)

 28日にパリ・パラリンピックが開幕する。日本選手は海外開催の大会では史上最多176選手が舞台に立つ。大きな飛躍が期待されているのがパラリンピック初出場の選手たちだ。

 昨年のパラ陸上世界選手権パリ大会で一躍、注目を集めた。男子400メートル(視覚障害T13)の決勝で、スタートから勢い良く飛び出し、ストライドの大きな走りで一気に加速してフィニッシュ。この大会の予選に続いてアジア記録の47秒79をマークして優勝し、パリ・パラリンピック代表入りを確実にした。思わず拳を力強く突き上げ、「やっと自分が世界で戦えるんだと証明できた」と宣言した。

 難病の「 錐体 すいたいジストロフィー」で10歳から徐々に視力が低下する一方、陸上で健常者と競った。中学と高校では棒高跳びを専門にし、全国高校総体にも出場。五輪を目指し、中京大時代に十種競技に取り組んだ。

 パラへの転向を決めたのは大学4年生の頃。陸上での競技生活に区切りをつけようと考えていた時、母親の勧めもあり新たな挑戦に踏み切った。十種競技で高めた身体能力をベースに短距離や走り幅跳びで好記録を連発し、最高峰のパラリンピックが現実的な目標となった。

遠征、所属変更「正解」求め

 今年2月、2週間ほど豪州に遠征し現地の大会にも出場した。春には中京大から、陸上部にパラアスリート部門(パラブロック)がある日体大に所属先を変えた。環境の変化などで一時、コンディションを落としたが、全てはパラリンピックに向けたレベルアップのためだ。「現状維持はあまり良くない。うまく行かないことがあるかもしれないが、(その後の結果で)僕自身が正解にすればいいと思っている」と言い切る。

 パラリンピックの前哨戦と位置づけた5月のパラ陸上世界選手権神戸大会では、400メートルで自身のアジア記録に迫る47秒86で走り銀メダルを獲得したが、46秒44で世界記録を塗り替えたスカンデルジャミル・アスマニ(アルジェリア)に差をつけられた。「前半、うまくスピードに乗って走っていけた。(アスマニには)ちょっと無理するような形でついて行こうとしたが、それだけでは追いつけないな、と感じた」と振り返る。

 「陸上競技がすごく好き」という練習の虫。神戸大会後、自分やトップアスリートの走りを動画などを使って研究し、フォームの改善点を模索する日々を過ごす。「僕が一番になるというのは頭の中にずっと描かれている」。パリの頂への道は決して簡単ではないが、強い気持ちで挑む覚悟だ。(藤井竜太郎)

ふくなが・りょうた 1998年9月28日生まれ。滋賀県出身。2023年のパラ陸上世界選手権パリ大会では400メートルの金メダルのほか、走り幅跳びでも銀を獲得した。200メートル、400メートル、走り幅跳び(以上いずれも男子の視覚障害T13)のアジア記録保持者。パリ・パラリンピックは400メートルと走り幅跳びに出場する見込み。現在の視力は0.06程度。日体大の大学院ではコーチング学を専攻する。

[世界のライバル]アスマニ 連覇挑む

 福永の最大のライバル、東京パラリンピック金メダルのアスマニは、優勝した世界選手権神戸大会のレースでは追走する福永を意識し、「つかまらないぞ」と念じながら走ったという。「(福永は)パリ・パラリンピックではいいタイムを出すはず。競争相手として素晴らしく、僕を押し上げてくれる存在」と、若きスプリンターの実力を認める。福永には初の金メダル、アスマニにとっては2連覇がかかる男子400メートル(視覚障害T13)決勝は9月5日に行われる。

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