キャプテン翼は「野球が好き」の一言から始まった…作者・高橋陽一さんが明かす「デビュー前」

　人気サッカー漫画『キャプテン翼』の作者で、関東サッカーリーグ１部所属の「南葛ＳＣ」（東京都葛飾区）代表の高橋陽一さんと風間八宏監督が、読売新聞ポッドキャスト「ピッチサイド　日本サッカーここだけの話」に出演。人生におけるそれぞれの「恩師」について語った。

漫画のいろはを教わった

　高橋陽一さんは、１９８０年に集英社の「週刊少年ジャンプ」の読み切り作品『キャプテン翼』でデビュー。翌年から連載がスタートした。

　高橋さんが漫画家になることを決意し、出版社に初めて作品を持ち込んだのが高校３年の頃。ジャンプ編集部に持ち込んだ作品はスポーツ漫画ではなかったという。

　「西部劇の話とか……」

　野球部に在籍していたので野球が好きだと話したら、「じゃあ、スポーツ漫画を描いた方がいいんじゃないかって言われて。そこからスポーツ漫画を描き始めました」

　初代編集担当として高橋さんについたのが鈴木晴彦さん（元集英社常務取締役）。鈴木さんはボクシング漫画『リングにかけろ』の作者・車田正美さんの担当編集でもあった。

　「漫画のいろはを教わったという感じです」

　「見てもらって『ここはダメだ』『ここは良い』とか指摘してもらって。そしてまた新しい漫画を持ち込んで、何本か持ち込んだときに賞を取りました」。受賞をきっかけに誌面デビューした。

「ネコ」の愛称で親しまれた選手から

　風間さんが印象に残っているのは「仲の悪かった」監督だという。ドイツでプレーしたときに「こっちもバンバン感情的に言うから、向こうも『どっちが監督だ？』みたいに言って。でも、その監督は俺を使うわけですよ」。そのとき、感情を捨てて徹する大切さを学んだという。

　また、釜本邦茂さんの在籍したヤンマーディーゼルサッカー部で活躍した故・ネルソン吉村（吉村大志郎）さんも、風間さんが「恩師」と語る一人だ。ボールタッチの柔らかさから「ネコ」の愛称で親しまれた。

　「指導に来てくれたんですよ。全部同じ場所に１回のタッチで止まるわけ」。ネルソンさんのボールタッチを参考に、風間さんはボールの置き場所を見直してプレーを安定させたという。

　「だから、恩師はいっぱいいるんです。『俺は教えてないよ』って言われるんですけど、教えてくれたんですよ。みんな恩師だと思ってます」

　マツダＳＣ（現・サンフレッチェ広島）時代に監督だったオフトさんは？

　「いや、オフトさんは俺のことあんまり好きじゃなかったと思う（笑）」

新小岩に新スタジアム構想

　高橋さんは２０１９年、南葛ＳＣの当初の後援会長という立場からクラブオーナーに就任。キャプテン翼の作者が地元クラブのオーナーになり、漫画に登場する「南葛」を現実にした。

　「自分が応援するチームが欲しいと思っていました。葛飾区からＪリーグを目指してるアマチュアチームがあったので、協力してほしいという話から『南葛ＳＣという名前にしませんか』と提案させてもらって、南葛が生まれました」

　Ｊリーグの下部リーグ・ＪＦＬからもう一つ下の関東サッカーリーグ１部に所属する。当時はさらに下の東京都社会人リーグ３部だった。「東京にはヴェルディやＦＣ東京がありますが、東京西部なので、僕ら東京下町の人間からすると『おらがチーム』という感じではないんですよね。東部にＪリーグのチームが欲しいと常々思ってたので、自分でやるしかないかなと」

　東京都葛飾区にはＪＲ新小岩駅から徒歩１０分のところにある「東新小岩運動場」に、サッカー専用スタジアムを建設する構想がある。

　高橋さんも「サッカー専用スタジアムとキャプテン翼ミュージアムや商業施設を併設すれば、世界から人が来てくれるだろうし、その頃にはＪリーグに昇格してほしいと思います。Ｊリーグの試合が葛飾で行われるようになったら、東京東部の人たちも来てくれるんじゃないかと思います」とスタジアム建設に期待感を高めている。

プロフィル

高橋陽一（たかはし・よういち）

　漫画家。南葛ＳＣ代表。代表作『キャプテン翼』は１９８０年に「週刊少年ジャンプ」の読み切り作品として掲載され、翌年から連載がスタート。シリーズ累計世界９０００万部を発行した。４０年以上続いた連載は４月に終了した。１９６０年生まれ。東京都葛飾区出身。

風間八宏（かざま・やひろ）

　南葛ＳＣ監督兼テクニカルダイレクター。１９８４～８９年ドイツでプレーし、マツダＳＣ（現・サンフレッチェ広島）に入団。引退後は川崎フロンターレや名古屋グランパスの監督を歴任した。１９６１年生まれ。静岡県出身。