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「持続的な成長のため社会的な価値を追求」「組織を見直し不動産部門に注力」…住友商事・上野真吾社長

読売新聞 / 2024年8月20日 14時40分

インタビューに答える住友商事の上野社長(東京都千代田区で)

 米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が投資を積み増したことが明らかになり、総合商社は株式市場で注目されている。住友商事は60年ぶりに大規模な組織改正を行い、強みを持つ分野はより一層力を入れる。それぞれの事業でナンバーワンを目指すという上野真吾社長に話を聞いた。(聞き手・金井智彦)

社員と同じ目線で語る

 ――社長就任後に感じていることは。

 「就任あいさつは、通常は広い部屋に社員を集めてインターネットでつないで話すスタイルだったが、偉い人がずらずら集まって、若い人がネットで聞くというスタイルを改めたかった。若い人と話がしたいので、食堂のいすに座ってもらった。

 社長は組織のピラミッドの頂点にいると思われがちだが、そうは思っていない。社員と同じ目線で語る社長でありたい。社員には持ち場ごとに役割がある。社長も同じで、仕事に優劣や上下はない。フランクなコミュニケーションを取りたいというのが、組織マネジメントの考え方だ。

 もう一つ、大切だと感じているのが持続的な成長だ。経済価値を追求するのは企業として当然だが、同時に社会的な価値を追求したい。短期的な一過性の利益を求めるのではない。長期的な利益と、社会的な貢献によって会社は成長する。

 5月に発表した新中期経営計画に経営哲学を盛り込んだ。それぞれの事業でナンバーワンを目指す。他社を抜いて商社で1位になるのではない。商社にはいろいろなビジネスラインがあり、歴史と経緯があって今にいたっている。三菱商事と三井物産は資源が強い。全員が商社のナンバー1を目指しても、無理な部署もある。他社を超えろと言っても無理だ。

 我々なりに、強みがあるはずだ。シェア(占有率)は高くないが、収益性がいい、成長性がある、顧客満足度が高い。それらを伸ばしてくださいという考えだ。ど真ん中の事業を掘り下げて、投資をする。

 今後3年間に1・8兆円の成長投資を行う計画だが、8割を成長分野に使い、2割は強みが生かせる新規分野に使いたい。各事業部がナンバーワンになって集合体になれば、すごい会社になるはずだ」

44個のSBUを横並びに

 ――強みを生かして力を入れる分野は。

 「60年ぶりに組織を見直した。ストラテジックビジネスユニット(SBU)と呼んでいるが、44個を横に並べる。10人のSBUもあれば、400人のSBUもある。人数ありきではなく、戦略単位にした。九つの営業グループに束ねる中で、新しい組織ができた。

 たとえば、都市総合開発グループは、不動産部門と国内外のまちづくりを組み合わせた。一緒になることで、総合開発ができる。ベトナム北部の北ハノイでは、広大な土地を使ってスマートシティを進めている。不動産もあれば、教育、娯楽施設もある。これらをスマート化する。進めるには不動産部門が欠かせない。

 国内では、九大の箱崎キャンパス跡地の再開発がある。弊社とJR九州、西日本鉄道が優先交渉権を得た。NTTが持つ次世代通信基盤『IOWN(アイオン)』の光技術も使い、格段にスピードが速いコミュニケーション通信が可能になる。不動産単体ではなかった経験だ。ここまで不動産に力を入れている商社はないはずだ」

株主からの問い合わせ増加

 ――バフェット投資で注目されている。

 「日本の商社はいろいろなビジネスをやっており、投資しておけば、ポートフォリオ(資産構成)のバランスが取れる。これだけ成長している商社があるということをバフェット氏は再認識したのではないか。商社ごとに資金を張れば、問題はないはずだ。

 海外の投資家に聞くと、これまでは『商社が何をしているかわからない』と言われてきた。バフェット氏のおかげで理解が深まった。株主からの問い合わせや質問が増えている。理解度を高めてもらえば、企業価値の向上につながる」

 ――エネルギー政策の今後について。

 「政府がまとめるエネルギー基本計画は、日本にとって重要だ。前の計画は、電力需要やエネルギー需要は今後、減る。人口も少なくなり、省エネルギーが進むという考えだった。実際の利用量は格段に増える。デジタル化、AI化が進み、データセンターが増える。巨大な設備で1ギガワットの電力を使い、原発1基と同じだ。

 (電力供給が不安定だと)GAFAを含めた海外勢の投資機会をなくす。脱炭素の世の中なので、石炭火力を増やすとはならない。すぐに再生可能エネルギーが使えないのならば、移行期のエネルギーである液化天然ガス(LNG)を増やすとか。

 日本に投資を呼び込むという意味で、エネルギー基本計画は非常に大事だ。政府には、抜本的な見直しを進めてほしい」

◆上野真吾氏(うえの・しんご) 1982年慶大商卒、住友商事入社。副社長を経て、2024年4月から社長。兵頭誠之会長、南部智一副会長と同い年。入社年次は兵頭氏よりも2年早い。B級グルメの食べ歩きが趣味。兵庫県出身。

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