1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

金原瑞人さん 滅びゆく世界 幻想的なSF

読売新聞 / 2024年8月23日 15時15分

『結晶世界』J・G・バラード著/中村保男訳(創元SF文庫) 858円

 詩歌で心 かれた「ロマンチックで、センチメンタル」な好みは、同時期に読み始めた海外文学にも共通している。

 その頃読んでいたのは、英米のミステリーやSFだった。ミステリーではウィリアム・アイリッシュやヴァン・ダイン、エラリー・クイーン、ディクスン・カー、SFではアイザック・アシモフ、ロバート・A・ハインライン、アーサー・C・クラークなどを読みふけった。

 中でも好きだったのが、J・G・バラードの「破滅3部作」と呼ばれる『沈んだ世界』『燃える世界』『結晶世界』だ。特に『結晶世界』は、「アシモフらこれまでのSFとは少し違う、幻想的で実験小説的な傾向が強い。SFでこんな世界が書けるのかとびっくりした」と振り返る。

 水晶のように結晶化した森が、やがて人や動物も結晶化させてしまう世界。滅びゆく世界を美しく幻想的に描いた物語は、いつか自身の手でも訳したいという。

「『読んでもらいたい』より『訳したい』」

 「『読んでもらいたい』というより、『訳したい』という個人の趣味だと思う。甘すぎるのは嫌だけど、そこに落ちてしまわないようにギリギリのところで踏みとどまっているロマンチック、センチメンタルな部分が、僕にはやっぱり必要なんです」

 バラードの他、レイ・ブラッドベリの作品にも夢中になった。『バビロン行きの夜行列車』(野沢佳織さんとの共訳)を1998年に刊行した際、ブラッドベリ本人から届いたファクスは、今でも大切に保管している。

 「まだブラッドベリが生きていた頃。翻訳中に意味が分からないところを手紙で質問したら、アメリカからファクスで答えを送ってくれたんです。夢中で読んだ作家とやり取りできたのはうれしかったですね」

 漫画、アニメ、詩歌、海外文学にヤングアダルト……。読み幅の広さを表しているようだが、「飽き性なんでしょう」と、こだわりなく話す。

 「翻訳の仕事も一緒で、絵本もヤングアダルトも一般書も古典の新訳もやる。最近は(イラストと文章を組み合わせた)グラフィック・ノベルも訳しています。同じことをやっていると飽きちゃうのは、昔も今も変わらないですね」(小杉千尋)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください