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なぜ「官製ファクトチェック」はダメなのか 総務省「偽・誤情報」対策案めぐり関係団体が懸念

J-CASTニュース / 2024年8月19日 18時0分

なぜ「官製ファクトチェック」はダメなのか 総務省「偽・誤情報」対策案めぐり関係団体が懸念

総務省の有識者会議による「とりまとめ案」が波紋を広げている

「偽・誤情報」対策のあり方が課題になる中、総務省の有識者会議が出した「とりまとめ案」をめぐり、ファクトチェック関係団体から懸念の声が相次いでいる。

案では、今後の「総合的な対策」のひとつとして「社会全体へのファクトチェックの普及」を掲げているが、当のファクトチェック団体から異論が出ているということだ。

そのひとつが、不適切な情報を削除したり、動画であれば収益化を停止したりする「コンテンツモデレーション」のあり方だ。これまでも、ヤフーやメタといったプラットフォーム事業者は、利用者による不適切な書き込みを削除してきた。

ただ、今回の案は「行政法規に抵触する違法な偽・誤情報に対し、行政機関からの申請を契機とした削除等の対応を迅速化」とあり、コンテンツモデレーションの対象に偽・誤情報を含むことを明記。「ファクトチェック機関」などと連携し、民産学官の協議会を設置することもうたっている。

つまり、政府の支援を受けた形での「ファクトチェック」の結果を根拠に、情報を削除することへの懸念だ。

ファクトチェック国際団体「虚偽であるという理由だけで削除されるべきではない」

案を出したのは、23年10月末に設置が発表された「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」(座長:宍戸常寿・東京大学大学院法学政治学研究科教授)。

上記の「迅速化」に加えて、政府や行政機関、ファクトチェック関係団体、プラットフォーム事業者などを念頭に置いた「マルチステークホルダー」による連携・協力の枠組みの整備などを提言している。

日本では、3つのファクトチェック団体(日本ファクトチェックセンター(JFC)、リトマス、インファクト)が国際的なファクトチェック団体「国際ファクトチェックネットワーク」(IFCN)の認証を受けている。

この3団体とは別に、自分でファクトチェック記事を出すのではなく、ファクトチェックを行う団体への支援活動を行っているファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)がある。このうち、インファクトとFIJが案をめぐる声明を出している。

IFCNは24年6月に出した「サラエボ声明」で、ファクトチェックをする人が「ネット上での検閲者」だとして攻撃されていることを指摘した上で、

「言論の表現であるファクトチェックは、本当の意味での検閲だとは言えない。検閲は情報を削除する。ファクトチェックは情報を追加する」

と説明。削除については

「実害をもたらす情報であれば削除される場合もあるが、虚偽の主張は、それが虚偽であるという理由だけで削除されるべきではない」

などと慎重な立場だ。

「政府の発信そのものもファクトチェックの対象」

インファクトが8月11日に出した声明では、「健全なファクトチェックの実施に悪影響を与えるのみならず日本の言論空間そのものに禍根を残す内容を含んでいる」と指摘。政府が「ファクトチェック団体」を支援する枠組みができると、それが「官製ファクトチェック」につながりかねないとして

「政府の発信そのものもファクトチェックの対象であり、仮に『官製ファクトチェック』がデジタル空間で『偽誤情報』をファクトチェックしたとしても、それは政府の代弁にしか過ぎず、ファクトチェックではありません」

としている。

今回のとりまとめ案では、ファクトチェックで誤りだとされた情報の削除も検討されていることに触れて、「サラエボ声明の精神とは異なる」とも指摘している。

FIJが8月15日に出した声明では、案がファクトチェックの重要性を指摘している点は「評価できる内容」で、協議会の設置も「必要なこと」だとしている。だが、「『表現の自由』を侵害する懸念」もあるとしている。

例えば「官製ファクトチェック」の問題について

「政府から資金的、あるいは政治的な支援を受けたファクトチェック団体が出現したり、特定の政治的主張を目的とする団体が、国際的な基準を無視して『ファクトチェック団体』を名乗り、政府に批判的な言説を『ファクトチェック』と称して批判したりする事態」

が危惧されるとした上で、

「政府・公的機関などからのファクトチェック組織の独立性確保が必須」

といった事柄の明記が必要だとした。

インファクトが8月12日にオンラインで開いたシンポジウムでも、ファクトチェック機関の独立性について懸念する声が相次いだ。

とりまとめ案は、8月20日までパブリックコメントを募集している。

(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)

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