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骨髄ドナー「同意書」電子化本格運用へ…手続き負担軽減狙う、「立会人」署名省略に懸念も

読売新聞 / 2024年8月20日 7時43分

 白血病患者らへの骨髄移植を仲介する日本骨髄バンク(東京)が、提供希望者(ドナー)の了承を得る「最終同意書」の電子化に乗り出したことがわかった。先月試行を始め、近く本格運用する方針で、手続きにかかるドナーの負担を軽減するなどの狙いがある。だが従来の同意書にあった弁護士ら「立会人」の署名欄が削除され、一部の弁護士から「手続きの正当性を確認する立ち会い制度の不要論につながりかねない」と懸念の声が出ている。

 骨髄移植は、患者とドナーの白血球の型(HLA)が適合して初めて可能になるが、その確率は数百~数万分の1とされる。適合してもドナーの健康状態や仕事の都合などで移植に至らないケースも多い。ドナーにとっては、準備にかかる長い拘束時間が負担となっていた。

 こうした現状を踏まえ、バンクではHLAが適合した後の手続きについて、提供までの調整を担う「コーディネーター」とドナーらの面談のリモート化などの議論を進めてきた。6月からはドナーの健康状態などを確かめる「確認検査」で、一部のコーディネーターが担当する案件を対象に電子化を試行導入。バンク側がドナーのスマートフォンなどにSMS(ショートメッセージサービス)を送り、ドナーは記載されたURLにアクセスして手続きを進める。

 医師らがドナーと対面して行う最終同意書の手続きについても、7月中旬から確認検査と同様の仕組みで試行が始まった。従来は、「医師らがドナーに医療事故などのリスクを十分に説明した」「ドナーが自らの意思で提供を希望している」ことなどを弁護士ら「立会人」が確認し、同意書に署名する形で行われていた。バンクでは、電子化で書面の紛失を防ぎ、リモート化促進によるドナーの負担軽減につながるとしている。

 一方で、ドナーの同意手続きに弁護士が立ち会う制度は残るものの、署名欄は削除されることになった。バンクでは「誤送信による情報漏えいを防ぐため」(担当者)としているが、関係者によると、バンク内では手続き簡略化に向けて立ち会い制度の廃止を望む声も根強いとされる。立会人経験のある弁護士は「制度の不要論につながり、ドナーの人権が適正に守られなくなる恐れもある」と危惧している。

立ち会い制度 真の同意確認

 最終同意書における立ち会い制度は、骨髄採取後にドナーが意識不明となった事故を受け、バンクが1995年に東京弁護士会と協定を結んで導入された。ドナーが医師の説明で心理的に圧迫され、自らの意思に反して提供に同意することなどを防ぐ目的がある。

 昨年度に行われた最終同意の面談は計1316件。同会は関東地方の移植363件に立会人となる弁護士を派遣し、札幌弁護士会でも同様に18件で、広島弁護士会でも30件で弁護士が立ち会った。弁護士以外でも、医師やドナーの知人らが立ち会うことがある。過去には立会人の弁護士が手続きに疑問を呈し、同意が撤回されたケースもあるという。

 自身もドナーとして骨髄提供の経験があり、医師でもある福田友洋弁護士(札幌弁護士会)は「ドナーが安心して提供に臨めるよう厳重に検査や確認が行われている。ドナーや家族に説明が尽くされていること、真の同意が得られていることを第三者が確認する手続きは重要だ」としている。

 ◆骨髄移植=正常な血液細胞を作れない白血病などの治療の一つ。18~54歳の健康な人の骨髄などから採取した造血幹細胞を点滴して移植する。バンクを介した移植の実施数は、1993年の開始から2023年度までに計2万8652件。今年5月末現在で、血縁関係のないドナーからの移植を希望する患者1627人に対し、ドナー登録者数は55万6160人。

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