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「保存したタマネギを食材として流通」「コーポレートPPA事業に注力」…双日・植村幸祐社長

読売新聞 / 2024年8月22日 13時14分

双日の植村社長(東京都千代田区で)

 総合商社の双日は、インフラと食料、エネルギー素材の三つを当面の成長分野に掲げ、事業を展開するとともに、社会課題の解決を目指している。食料自給率の改善や脱炭素につながる取り組みについて、植村幸祐社長に話を聞いた。(聞き手・金井智彦)

世の中の変化踏まえ中身を再定義

 ――力を入れている事業分野は。

 「2026年までの中期経営計画で掲げたのは、エッセンシャルインフラとフードバリューチェーン、エネルギー素材ソリューションの3分野だ。世の中の変化を踏まえて中身を再定義した。

 たとえば、フードバリューチェーンは、食品卸を中心に事業展開しているが、肥料のような食料の上流にあるような事業が周辺にいくつかある。肥料を使って農業をして、生産物を流して販売するのが一つだが、 残滓 ざんしだとか、ごみも再利用する。脱炭素につながるものに変換する。

 農業の生産性を向上させるデジタルの活用によって、天候に左右されず、生産できるようになる。DX(デジタルトランスフォーメーション)の要素を含め、食料ビジネスは変わってきた。

 牛肉を輸入に頼っているベトナムでは、畜肉業をやっている。牛を飼育して肉に加工して卸して販売させる一連の流れだ。アジアでは、(生産、輸送を低温で保つ)コールドチェーンが発達していない。日本のような例は非常に少ない。国は違っても同じようなことができるのではないか」

 ――国内生産者へのメリットは。

 「タマネギは中国産が増えており、国内の自給率を上げたい。秋田、高知、大分の3県で作付面積を増やす取り組みを手がけている。農業法人を持っており、場所によっては合弁会社を設立して進めている。タマネギを保存して食材として流通させる。日本人の消費は多く、食糧管理の観点で緊急性が高いと考えた。農村は、人口の減少が大きな影響を与えている。ほかの県にも増やしていきたい」

 ――双日が農林水産業に関わる意義は。

 「食料自給率と安全保障は重要だ。(自給率の改善は)政府だけではできない。民間では、収益の確保が不十分な面がある。官民でやるべきだ。当社が得意な場所や地域があり、そこで頑張れば、現地政府の支援も引き出せる。

 農業でもうかっているわけではない。かつて、サトウキビからエタノールをつくる事業を手がけたが、天候に左右され、価格も変動する。1年単位でしか規模拡大はできないし、農家との協議もあって時間がかかる分野だ。ビジネスとして成立させるのは難しいと理解した上で、何かできないかという思いがあった。

 魚にも力を入れている。卸売や加工、流通を手がける会社を買収した。10年くらい前から、マグロの養殖もやっている。海外にどうやったら展開できるのか、検討を進めている」

電力安定供給のため蓄電池も手がける

 ――電力、インフラについては。

 「かなり前から、太陽光や風力発電をやっている。太陽光は、固定価格買い取り制度(FIT)が10年間の寿命で終了する。国内の半分強がFITの恩恵が受けられなくなっており、買い取り価格が安くなっている。ビジネスとして成立しづらい。また、昼間はいいが、夜は発電できない。安定供給するために、蓄電池も手がけている。

 (企業や自治体が発電事業者から長期に再生可能エネを買い取る)コーポレートPPAという形態が出てきた。法人同士の売電契約で、こうした事業を増やそうと思っている」

 ――政府は、エネルギー基本計画の見直しを進めている。

 「原子力は不可欠な電源だ。民間だけで進めるのは難しい。政府がどこまで筋書きを描き、どういった導入方法で、どれくらいの時間をかけて安全対策を講じるのか。国民の納得を得てやらないとダメだ。クラウドサービスを始め、データセンターの消費電力は、これからも増えていく。今の状況では貿易赤字も大きくなる。電力需要が増えることを前提にしたシナリオを考えなければならない。

 省エネルギーだけでは足りない。脱炭素を念頭に置き、エネルギーのベストミックスを示す必要がある。エネルギーを供給して制御し、省エネも含めて無駄なくやっていく。こうしたマネジメントが必要だ」

◆植村幸祐氏(うえむら・こうすけ) 1993年東大農卒、日商岩井(現双日)入社。執行役員を経て2024年4月から社長。兵庫県出身。数学に関する本を好んで読む。車のナンバーのような街中にある数列から、割り切れる数や、階乗の数など「美しい数字」を考えている。

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