関東一、攻めるバックホーム ９回２死 同点阻んだ

９回神村学園、中堅手・飛田〈８〉の好返球で本塁タッチアウトにし、喜ぶ坂井（左から２人目）ら関東一の選手たち（２１日）＝大金史典撮影

　第１０６回全国高校野球大会は２１日、準決勝２試合が行われた。第１試合は、関東一（東東京）が１点を追う七回に試合をひっくり返し、神村学園（鹿児島）に競り勝った。第２試合は、京都国際（京都）が青森山田（青森）の継投のタイミングを捉えて逆転勝ち。関東一は夏は初めて、京都国際は春夏通じて初の決勝となる。２２日は休養日で、決勝は２３日午前１０時開始の予定。

関東一２―１神村学園

　関東一は七回、越後のチーム初安打を足がかりに一死二塁とし、熊谷の適時打で追いつき、敵失で勝ち越し。坂井の好救援が光った。神村学園は相手を上回る８安打を放ったが、要所を抑えられた。

　１点リードの九回二死一、二塁で、関東一の２番手・坂井が相手の代打を２球で追い込んだ。「（打球が野手の頭を越える）オーバーはない」。前進守備を敷いていた中堅手の飛田は体重を前にかけた。

　５球目、打球が二遊間を抜け、自らの前に転がってきた。すぐさま捕球体勢に入りながら、「（走者は）絶対に三塁を回る。強い球をベース上へ」と本塁へ返球。ノーバウンドの球を捕った捕手の熊谷が二塁走者をタッチアウトにし、試合を終わらせた。本塁カバーに向かっていた坂井は「やっぱり、うちの守備は最高」と笑った。

　「１点を防ぐ守備は一つの武器。攻める意識で練習している」。飛田がそう話すように、今年は「守備のチーム」だ。打力に不安があるぶん、内外野ともに様々な状況を想定してノックを受けるなど自主練習を増やして鍛えてきた。

　準決勝までの３試合で失策は一つずつ。「外野手のファインプレーは流れを変えられるので、常に練習している」と飛田は言った。

　七回には、左翼手の坂本が手前で落ちそうな打球を地面すれすれで好捕。その裏に逆転したのが象徴的だった。「うちは守備からリズムを作るチーム」と胸を張る坂井は全４試合で救援登板して無失点。「バックが堅いぶん思い切って投げられる」と話す。

　３回戦から３試合連続で１点差ゲームを制し、この日は無失策。磨きあげた武器で、初めて４強の壁を打ち破った。（中安真人）

好リード＆追いつく一振り

　関東一の熊谷が同点打。七回、越後がチーム初安打を放ち、一死二塁で打席に入り、初球の外角球を流し打ち、一塁線を破る適時二塁打とした。「とにかく甘い球を思い切り振っていこうと思った。どんな球を打ったかも覚えてない」と大粒の汗を拭った。好リードでも勝利に貢献した捕手は「チームも個人も試合ごとに成長している。その成果を決勝で発揮したい」と意気込んだ。

関東一・米沢監督「坂井は力を抜いたり入れたり、彼なりに一生懸命、考えて投げてくれている。（好返球の）飛田は秋の大会で失策し、悩んで乗り越えてきた」

神村学園　変化球自在　コーナー突きゴロの山

　コーナーを丁寧に突き、神村学園のエース左腕・今村は内野ゴロの山を築いていく。右打者にはツーシーム、左打者へはスライダーが効果的だった。六回まで無安打も、「打者一人一人に集中するだけ」。

　だが、１点リードの七回、先頭に浴びた初安打からピンチを招く。一死二塁で外角のツーシームをはじき返される。一塁線を破る適時二塁打とされ、追いつかれた。なお一死三塁。次打者を速球で打ち取ったかに見えたが、味方の失策で勝ち越された。「相手打者の対応力が上だった」と同点打を振り返り、「野球にエラーはつきもの」と潔かった。

　「日本一になるには、お前の左腕が必要だ」。昨年の新チーム発足後から、小田監督に言われてきた。１、２回戦に続き、この日も完投し、３安打２失点（自責点１）にまとめた。「最後まで神村らしく、しっかりしたかった」。先頭に立ってチームを引っ張ってきたエースは試合後、真っ先に整列した。（古島弘章）

神村学園・小田監督「ミスをしても取り返そうとする強い気持ちで戦うことができた。選手たちは、よく頑張ってくれた」