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宇都宮のLRT利用、開業1年で予測2割上回る470万人超…自治会長「こんなに活気満ちるとは」

読売新聞 / 2024年8月22日 16時0分

 次世代型路面電車(LRT)としては国内で初めて全線新設された栃木県の「宇都宮芳賀ライトレール線」が開業して26日で1年を迎える。地域の足として定着しつつあり、累計乗客数は予測を2割ほど上回る470万人超に達する見込みだ。沿線では子育て世代の流入も進み、街に活気をもたらしている。(宇都宮支局 井上暢)

「脱マイカー」

 宇都宮市のLRT停留場から徒歩圏のマンションに家族4人で暮らす女性(43)は、4月に横浜市から移住した。「マイカーなしで生活できるのが決め手だった」と声を弾ませる。夫婦はそれぞれ自営業で、在宅で働く。長男(6)の通う小学校や商業施設は沿線にあり、移動の足はLRTで十分という。

 JR宇都宮駅東口から芳賀町の工業団地までの14・6キロを最短42分で結ぶ同路線は、宇都宮市などが車に依存しないコンパクトな街づくりを目指して整備した。総事業費は約684億円で、国が半額を補助した。

短い運行間隔

 運行会社によると、利用者は開業312日目に予測より約2か月半早く、累計400万人を突破した。休日の利用が1日1万人程度と当初予測の倍近くで、平日も1日1万5000~1万8000人と堅調だ。

 沿線には、ホンダやキヤノンなどが拠点を置く工業団地があり、通勤需要が貢献している。企業の要望などで、1年で3回のダイヤ改正が行われ、快速も走るように。電車の運行間隔は最短4分、日中でも12分という利便性の高さが、通学や買い物客も含めた利用を増やす好循環を生んでいる。

沿線人口増加

 宇都宮駅周辺ではマンション開発が続き、郊外の新興住宅地に2021年に新設された小学校の児童数は、この3年で170人増え、860人に膨らんだ。地元の自治会長は「何もなかった地域がこんなに活気に満ちるとは」と驚いている。

 宇都宮市の人口が減少傾向にある中、3月時点の沿線人口は6万3890人と、LRT整備が本格化する前の12年から約8%増えた。

 同市の沿線の工業団地では、キヤノンが半導体関連工場を建設するなど企業の設備投資が相次ぎ、少なくとも計1100億円に上る。

 佐藤栄一市長は「宇都宮を大きく変えた」と開業の手応えを語る。自治体関係者などの視察や見学ツアーは、7月末までで413件行われ、国内外から7000人超が訪れた。人口減で地方都市の公共交通が細る中、脱車依存のコンパクトシティーを目指す取り組みが注目を集めている。

 早稲田大学の森本章倫教授(都市・交通計画)は「沿線での居住を選択する人が増えていけば、緩やかにコンパクトな街になっていくだろう」としたうえで、「LRTは持続可能な街づくりの手段の一つ。整備を検討する場合は、事業の採算性を科学的に分析することが必要だ」と指摘する。

 ◆LRT=ライト・レール・トランジットの略。低床車両や段差の少ない停留場で乗り降りしやすく、専用レールを走るため定時性に優れている。マイカーからの転換により、温室効果ガス排出の抑制も期待される。国内では、富山市が2006年に導入。那覇市が40年代の新設開業を目指し、和歌山市も導入を模索している。

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